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2007年11月 3日 (土)

総義歯の難症例

 ここの所たまたま何人か、難症例の総入れ歯の患者さんが続いています。さらにそのうちの2人は読売新聞に載った「医療ルネッサンス」の記事で、補綴学会の専門医を知ったことで来てくれた患者さんで、たいへんありがたく思っています。しかしながらいずれもたいへん難しい症例の方で、患者さんにも通院回数等ご苦労をかけてしまっています。

 それにしても総義歯の患者さんもずいぶん減少した印象があります。私が群馬に帰ってきた15年前当時は、普段の人数もそうですが、とりわけ年末近くなると「新しい入れ歯に着替える」というような感覚で、総入れ歯の老人がどっといらっしゃったものでした。高齢者の自己負担が無料あるいは定額だった事も理由のひとつでしょうが、それだけでなく無歯顎の患者さんがずっと多かったのだと思います。
 近年よほどグラグラにならなければ歯を抜かなくなったので、総義歯の患者さんは減ったものの、総義歯になってしまった患者さんはとっても難しい状態になった、とよく言われます。歯周病が進むと歯の周りの骨が吸収してしまうので、その状態で長く置くと抜いた後の顎の骨もよっぽど平らになってしまっています。さらに総義歯になる年齢がより高齢になってきたので、顎の運動や舌や頬など軟組織の運動が義歯を使うのに適応できにくくなっていると言われます。このような状態でさらに人数が少ないのですから、今の若い先生方は練習の機会も少なくて大変だと思います。

 補綴の教室に残ったりしたがって学会の専門医だったりする私たちは、いわゆる世に言う「名人」ではなくても、困った時にいろいろ引き出しがある、どんな事をやってみたらよいかオプションに関する知識はあると思います。どうしても上手く行かない時に対処できる、横道に抜けてみることができることが利点だと思います。