2014年12月 8日 (月)

マイクロサージェリーコース受講

 久しぶりに更新します。

 去る11月29・30日(土・日)、澤田先生のマイクロサージェリー2日間実習コースを受けてきました。3年前のやはり11月に、同じく澤田先生のマイクロエンドのコースを受講しました。このコース自体人気で受講待ちの人がいるようですが、そのアドバンスコースであるマイクロサージェリーコースはさらに詰まっているようです。3年前に登録をしてお知らせをもらっていましたが、どうしても避けられない他の日程と重なっていまい、今回3度目にして満を持して受講することが出来ました。

 澤田先生は東京医科歯科大学の歯内療法学の教室に残り、有名なペンシルバニア大学に留学され、その後四ツ谷で日本でほとんど最初の「歯内療法専門医」として開業された先生です。大学ではわたくしの3年ほど後輩に当たります。雑誌の記事や論文多数はもちろん、数年前に書かれた著書は歯科業界ではベストセラーの一つになり、講演等でも引っ張りだこの先生です。

 マイクロサージェリーとは顕微鏡を用いて行う手術のことですが、歯科においては主に歯周療法と歯内療法で行われます。歯周療法では、歯周形成手術と言われる歯肉や結合組織の移植や移動術、歯内療法では歯根端切除が主なものですが、今回はもちろん歯内療法に関連するものです。いずれの手術も昔から存在するものですが、それを顕微鏡下で行うことにより繊細な切開、剥離、縫合、また最小限の侵襲で行うものです。

 1日目は朝からモリタ本社で、講義と実習をみっちりと行いました。実習は各人にマイクロスコープがあり、あらかじめ送っておいた根充済みの抜去歯やそれを使って作った顎模型を用い、もちろん顕微鏡下で術式内のキモを練習しました。細い糸・針を用いた縫合の実習は、手羽先を切開して行いました。この縫合ができるかどうかが最も不安だったのですが、結構できるものだと自信を持ちました。充実した実習でした。

 会場に到着するとたまたま顎補綴で1年下だった後輩がいて、お互い心強いものがありました。また昼食時間に自己紹介タイムがあったのですが、確か3年前のマイクロエンドのコースで一緒だった顔見知りがいたり、また医科歯科の15年くらい下の後輩がいたりしました。そんな事で1日目終了後の懇親会では楽しいひと時を過ごすことが出来ました。

 2日目午前は四ツ谷の澤田デンタルクリニックでライブオペの見学でした。診療室のスペースや患者さんへの負担から、ビデオ画面を介してのライブオペでしたが、様々な道具や道具立て、段取りなどライブならではの勉強が出来ました。午後は駅前の主婦会館の会議室で、最後の講義が行われました。極めて充実した2日間でした。

 顕微鏡下の治療はなにか全く特別なものという意識がありましたが、エンドの治療がやってみれば普通の事になったのと同じで、実習をやってみれば結構行けるのではないかという感想です。大変になったら顕微鏡を外せば続けられるわけで、これから歯根端切除術はマイクをサージェリーを行うと宣言します。

2013年12月 1日 (日)

補綴学会関越支部会2013

 大変しばらくぶりの更新になってしまいました。言い訳としては今年度地元伊勢崎歯科医師会の医療管理担当の理事を拝命し、いろいろと忙しい日が続いていました。それに関しては別に書くことにして、今回は昨日行われた日本補綴歯科学会関越支部会について報告します。

 11月30日の土曜日、宇都宮の栃木県歯科医師会館で、補綴学会関越支部会の総会および学術大会がありました。この日は臨時休診です。役員会があるため11時に会場に行かなければなりませんでしたが、若干早めに鹿沼インターに到着したため、花木センターに向かいました。本日はイベントがあるためかすごい混雑、遠くの駐車場に置かされたので、走ってちょっとだけ見てきました。

 11時前に無事会場に到着。役員会は1時間でしたが形式的なものではなく、けっこう話が盛り上がって時間が足りない様な状況でした。この場で突然総会の議長を依頼されたので、やりなれない事で大変緊張しました。12時から総会で無事議事を進行した後、30分から講演が始まりました。

 最初は専門医研修会で、新潟大学の荒井良明先生による「顎関節症の患者立脚型の治療体系」。現在の治療概念である①顎関節症の原因は多因子性である。②顎関節症は癌のように進行性の病気ではなくSelf-limiting、すなわち多くの症状はいずれ寛解する。③顎関節症のほとんどは非侵襲的な保存療法で症状を改善することができる。から、不可逆的な下顎位や咬合の修正を避けた治療を選択していく必要があるということです。特に新しい概念ではないと思いますが、たいへんまとまったわかりやすい講演でした。当院の治療としては15年以上前に依田教授のプロトコールを採用してから、この様な非侵襲的なアプローチを行なっています。ある意味慎重かつ保守的な私の治療方針にも合っているのですが、巷で見かける非常にアグレッシブな治療(咬合の変更や、顎を直せば何でも治るような言い方など)を行う先生方の自信が恐ろしいと思います。

 ついで学術大会が始まり、まず特別講演。新潟大学の野村教授による「高齢者の無歯顎補綴治療-40年間の臨床から観えてきたこと-」で、ご退官間近の先生のご講演でした。総義歯の臨床に関する極めて真っ当なお話でした。これに関してもさいきんは「下顎義歯の吸着」が流行りで、カリスマおよびその弟子のような先生方が多くの講演会などを行なっています。野村先生は「吸着するというのをどう言うのかわかりませんが、私は凡人ですから義歯がその場にあって咬めれば良いのでは」という、ある意味慎ましいと言うか、誠実なおっしゃり方でした。私もそんなに自信はありませんが、なんとか「合格点」を頂ける義歯臨床を目指しています。その後は一般演題が9題あり、活発な質疑応答も行われました。

 今回の大会長は新潟の魚島教授でしたが、彼が大学の同級生でもあり、また長男も今年4月まで新大にお世話になっていたこともあり、関越支部は私にとって非常に親しみやすい場となっています。今後も役員をクビにならない限り、出来る限りの貢献をしていきたいと思っています。

2013年4月18日 (木)

マイクロスコープ初心者

 昨年8月末に設置したマイクロスコープですが、現在までの使用状況などを報告したいと思います。

 歯科におけるマイクロスコープとは、治療用の「実体顕微鏡」のことです。

 さて、設置の記事で書いた様に、現在きちんとした根管治療を行うには、マイクロスコープは必須のアイテムだといわれています。それではマイクロスコープは何をするかといえば、要するに「よく見る」ことです。それ以上でもそれ以下でもありません。そのため、「見えるからといって、開かない根管は開かないでしょう」という先生も多くいらっしゃるし、私もそう思っていました。

 ここでまず、「根管治療」とは歯の神経の治療のこと。虫歯が進行して歯の中の「歯髄」、いわゆる神経の部分に到達してしまった場合、またさらに進行して「根尖部」すなわち根の先の部分に膿をもってしまった場合、歯髄を除去したり、細菌感染してしまった部分を掃除する治療です。硬い歯の中にはこの歯髄が入っている「歯髄腔」および「根管」と言われる空洞があります。これは細く狭く、複雑な形をしているため、隅々まで掃除するのは至難の業です。「根管が開く」とは、この歯髄腔を伝って根尖まで器具が到達することであり、根管治療の第一歩です。しかし根管はもともと細く曲がっている上に、さらに石灰化や汚染物質、前の治療の残存物などで詰まっていたりします。具体的には非常に細い、さまざまな形をしているドリル類や「ファイル」というハリのような道具、超音波の器械などを用いて進んでいくのですが、根気と技術を必要とする困難な作業です。

 さて、確かにマイクロスコープは「見えるだけ」ですが、実際に使用してみると今まで如何に「見えていなかった」のか、また見えていなかったために如何に「治療ができていなかった」のが、恐ろしいほどわかります。ですから、これまで見えなかったために実際は開けられるのに開かないと思っていた根管がたくさんあることがわかりました。またキレイにしていたつもりなのに汚染物質がどんなに残っていたか、驚くほどわかりました。

 なぜこの様によく見えるのかといえば、一つはもちろん見るものを拡大すること、もう一つは根管内にまっすぐ光が入ることです。通常の診療でも今やルーペは必須になっていますが、顕微鏡の拡大率はずっと大きく、また視野がブレないので明快に見えます。それに加えて狭い歯の中身、更に狭い根管の中の方を見るには、照明と視野が一致していることが重要です。これはほとんど顕微鏡の独壇場です。

 一保険医で、忙しい日常診療の中でなかなかゆっくりと、顕微鏡下での治療をすることは難しいのですが、今のところどうしても必要なときに「サッと」引き寄せて覗く、というスタイルで活用しています。設置のブログでも書いた様にかなりの出費にはなりましたが、2台のユニット(治療椅子)で使えるように天吊でアームの長い機種を選定したので、このようなことが可能になりました。これからは根管治療だけでなく、少しずつ修復治療や歯周治療にも活用していければと思っています。

2013年1月 4日 (金)

2013年頭の挨拶

謹賀新年。

 

 昨年4月には一番下の次男が大学生となり、家を出ました。賑やかだった家は家内と両親のみ、静かに暮らしています(?)。

 長男は春には新潟大学歯学部を卒業予定。無事国家試験を通過したならば、研修医生活が始まります。また長女も某美大を卒業予定、いまだ就職未定、。次男は昨年某大学工学部建築学科に合格し、通っています。

 昨年はゴールデンウィークには京都に出かけました。恐ろしく混んでいたザ・キング・オブ・観光地でしたが、久しぶりの寺社巡りでずいぶんと歩き回りました。また久々に家族揃っての夕食も楽しい一時でした。夏休みは家内と娘と羽越線で酒田から鳥海山登山。雪渓に沿ったお花畑は見事でした。秋には合格の御礼参りに御嶽山登拝、山小屋に宿泊して雨の中を下山してきました。山に関しては、できるだけちょっとした歩く機会を作って出かけ、足を鍛えるように心がけています。年末にも酷寒の京都、奈良を歩いて来ました。東大寺ミュージアムの開館記念特別展に感動。

 春からは家内も前響の一員として練習に参加しています。夏の楽芸会では、大好きだったが今まで何故かやったことがなかった、モーツァルトのピアノと管のためのクインテット。とても幸せな一時でした。秋の演奏会は難曲ラフマニノフの交響曲第2番、ダッタン人の踊りとともに、イングリッシュホルンを演奏しました。いつも前響をはじめ音楽の仲間に感謝です。

 医院では頼りにしていたベテランのDHが夏に急遽結婚退職。一時大変でしたが、10月に新人を補充し、衛生士3人、受付兼助手1人の体制に戻りました。皆頼もしく頑張ってくれています。9月には念願のマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を入れました。大工事になりましたが天井から吊り方式で設置したので、使いたい時に気軽に使える様になりました。現在もっぱら根管治療に使用していますが、研修を続けて様々に活用していきたいと思っています。

  5月には横浜で補綴学会、6月には名古屋で顎顔面補綴学会に参加してきました。いずれもほぼ1年ぶりの懐かしい人達とお話、また情報交換をすることが出来ました。

 年末の総選挙でまた政権交代、今日は安倍内閣の発足でした。暴走することなく穏やかで平和な1年でありますように。本年もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。 

2013年1月 3日 (木)

マイクロスコープ設置

 大分経ってしまいましたが、去る8月末、ついに念願のマイクロスコープ(歯科治療用実体顕微鏡)を入れました。

 もちろんだいぶ以前マイクロというものが話題になり始めた頃から気にはしていました。しかし何年前でしょう、医科歯科のエンド(歯内療法)の須田教授が伊勢崎でご講演された時、概ね「残念ながら何十年というベテランの先生でも、マイクロを使った卒後2、3年の先生にかなわない」的なことをおっしゃって、非常に衝撃を受けました。

 またその前後、東京でエンドの専門医として開業されている澤田先生の講演を聴き、さらに昨年秋に澤田先生の1泊2日のマイクロエンドの実習を受講しました。そこでさらにマイクロスコープの必要性を痛感し、またできるだけ早く実機を導入しなければ、と思いました。

 しかしマイクロスコープの問題点は、値段のこともありますが、何よりも現在の診療体系、診療実態に追加することが可能かということです。つまり、バタバタと忙しくやっている当院の治療の中で、ゆっくり顕微鏡を覗いて治療ができるかどうか、ということです。
 須田先生のご講演では、歯内治療の間じゅうずっと顕微鏡を覗いていなければならないわけではない、必要な時にパッと見て確認するだけでもぜんぜん違う、ということでした。まずそれがどうかを確認する目的もあり、いくつかの機種をデモ品としてお借りして使ってみることにしました。それが以外に現在の治療の流れの中で大丈夫、というか、非常に有用なものでした。またたまたま従業員が根管治療のやり直しを希望しており、時間外にゆっくり使ってみることも出来ました。

 結局いくつか検討した結果、ライカメディカルシステムズ製のものに決めました。この機種はアームが長いので、うまく2台のユニット(歯科診療椅子)の間に設置すれば、2台のユニットで使用できることが分かったからです。しかしそのおかげで工事は非常に難航しました。始め床から立ち上げるべく検討したのですが、床下の配管が複雑でほぼ実現不可能。若干価格が高いものの天吊とすることにしましたが、当院古い建物で鉄筋コンクリートのスラブ(1階のDsc_0458 天井かつ2回の床下)の厚さがどのくらいあるか不明なため、結局2階の床からボルトの穴を下に貫通させ、上下でスラブを挟みこんて固定するという形に設計しました。支柱部分ができてくるのに2ヶ月、そして工事当日は診療室にしっかりと足場を組み、また2回の床に穴を開けて、ボルト穴をドリリングしました。しかし鉄筋の入っている細かい場所は見えるわけではなく、穴あけに非常に難儀し、一時はダメかとも思いました。それでも何とか1日で固定までは成功しました。何日か仮の天井で済ませた後、クロスを張って完成。暑い中設置工事に携わっDsc_0467 てくれた皆さん、有難うございました。

 設置に疲れてしまい、実際の使用については次号で。

2012年8月30日 (木)

顎顔面補綴学会2012

 2012年6月15、16日(金、土)に、名古屋市の愛知学院大学歯学部楠本講堂で、日本顎顔面補綴学会学術大会があり、参加してきました。もちろん以前大学に籍を置いていた頃はメインの学会なので毎年出ており、また発表もしたのですが、開業してからはずっとご無沙汰しておりました。学会員ではあったのですが、本当に何年ぶりでしょうか、昨年認定医を取得したことから、そのポイントを稼ぐ事が主目的で(?)行って来ました。もっとも最近、群馬県立がんセンターや群馬大学からの紹介の顎補綴の患者さんが結構いらっしゃることもその理由の一つです。

 木曜日に診療し、金曜を休診にして早朝、本庄早稲田駅の始発で名古屋に出かけました。最初の方の演題は聴けなかったのですが、会場は一つなのでその後はずっと聴き漏らさず、学会発表づくしでした。昔からこの学会は発表に対する質問が多く、喧々諤々になることが特徴だったのですが、今でもそれは健在でした。また昔からの懐かしいお顔がたくさん見られたのも嬉しいことで、またみなさん熱心に発表されていました。発表内容は特殊な分野なので書きませんが、久しぶりに最近の流れが理解され、大変参考になりました。

 さて、かつての医科歯科の顎治の人も来ているかどうか楽しみにしていたのですが、現顎補綴教授の谷口先生、大学にいる秀島先生はもちろんいらっしゃったのですが、久しぶりに浜松開業の柳澤先生にお会いすることが出来ました。先生は1日だけで帰られるということで、夕飯を一緒にし、お互い開業医としてさまざまな情報交換が出来ました。ありがとうございました。

2012年6月30日 (土)

ノーベルガイド(ノーベルクリニシャン)

 去る今年4月、自宅のメインパソコンを更新すると同時に、ついにノーベルクリニシャンソフトウェアを購入して使い始めました。これは何かというと、「ノーベル」とはノーベルバイオケア、当院で採用しているインプラントのメーカーであり、現在のチタン製骨内インプラントの原型であるブローネマルクシステムを有するメーカーです。そしてこのソフトはインプラントの治療計画をシミュレーションし、埋入手術用のガイドを発注するためのものです。

 ノーベルガイドについてはネットを紐解けばさまざまなサイトにて動画などで説明されていますが、以下に何とか文章にて説明してみようと思います。インプラントの治療の目的は、「インプラントを骨に埋めること」ではなく、「インプラントで上手く噛める、あるいは綺麗な歯が入ること」です。そのためには補綴物、つまりインプラントの上に結合する歯や歯茎の部分が適正な位置にあることが重要で、そのためにそれを支えるインプラントを適切な位置に埋め込むことが必要です。

 基本的にはもともと歯根があった場所に埋められれば良いわけですが、残念ながら歯を抜いたあとは顎の骨が縦にも横にも減っています。さらに上顎では上顎洞、下顎では下顎管に代表される、避けるべき解剖学的構造がもともとあります。したがってインプラントの治療計画では、これらの要素に何とか折り合いをつけてインプラントの埋入位置を決めることになります。

 ある意味で理想的には、必ず最も良い位置に補綴物が設定できるように、骨や歯肉の増生手術をおこなってからインプラントを埋め込むという考え方もあります。前歯などで審美性が高度に要求される部位ではこのような考え方が優先されますが、できれば患者さんは大きな手術は避けたいと考えるでしょう。また、移植や人工物で増生した部分は長い目で見ると結構吸収してしまうということが最近では言われ、もともと骨がある部分を探して埋め込むことがまた見直されているようです。

 この様に「折り合いをつけた」インプラント埋入位置というのは、3次元的に複雑な方向で、ミリ単位の誤差が要求されます。そのため、目分量で行う手術では解剖学的構造がよく分かるように大きく粘膜を剥がし、歯根や骨の形がわかるようにしてドリリングします。しかしそれでもどうしても「絶対当たってはいけないところ」を避けるために、どうしても浅かったり歯から離れてしまったりすることが多いようです。

 ノーベルガイドでは、まず患者さんの模型上にワックスアップ(ロウで歯の形を作ること)してインプラントによって完成した状態を作ります。それをレジンに置き換え、X線を通さない点状の目印を埋め込み、その装置をはめて患者さんのCTを撮らせてもらいます。そして我々術者がその画像、すなわち患者さんの骨と完成した歯列の画像をパソコン上のソフトウェアで重ねて、見ながらインプラントの埋入位置などの治療計画を立てます。さらに骨を削るドリルの方向と深さを規定する装置であるサージカルガイドをメーカーに発注します。作られてきたガイドをきちんと口腔内に固定し、手術をすることによって、計画した位置にインプラントを埋入することができるのです。

 口腔内にきちんと適合したガイドを作り、また手術時にそれを定位置にきちんと固定できれば、計画したとおりにインプラントを埋入することができることになっています。私も経費がかかること、また実際のオペ時に粘膜を開けると骨の形はイメージと随分違うこと、などからノーベルガイドの採用には踏み込めませんでした。しかしこれまでの自分のインプラント埋入結果を反省した時、たとえば残存歯の隣のインプラントが歯根に当たることを恐れて残存歯から離れてしまう、下顎管への干渉や下顎舌側への穿孔を恐れるために浅くなってしまう、など慎重すぎて位置がいまいちの場合が多いようでした。これを解消するために、思い切って費用をかけてガイディッドサージェリーを導入しました。

 実際に数例やってみた現在の感想は、とにかくオペが早く、すなわち手術時間が短くなりました。今までのドリリングがいかにおそるおそるやっていたか、ということが改めてわかりました。そして埋入結果をCTで確認すると、ほんの少し浅めになりがちではあるものの、ほとんど計画したとおりにできていることもわかりました。また術後の腫れや痛みなど患者さんのご負担も非常に軽減されるようです。「フラップレスなどはもってのほか」などと思っていたのですが、慎重に使用してみて考えが変わりました。当方の準備は結構大変なのですが、すっかりノーベルガイドのファンになりました。

 もっとも全てが可能なわけではなく、サイナスリフト法を始めとして骨の造成など付加的な手術が必要な場合は簡単には行きません。フラップをきちんと開けて手術を行うことが必要になります。それでもその中あるいはその後のインプラントの埋入に関しては、ガイドを使用してきっちりと位置を決めることが良いと思います。

 というわけで、これからはできるだけノーベルクリニシャンソフトをガイドを用いた手術を行いたいと思っています。

2012年6月 7日 (木)

補綴学会2012

 去る5月26、27日と第121回日本補綴歯科学会学術大会があり、行って来ました。今回は東京歯科大学有床義歯の主管で、会場は横浜の神奈川県民ホールおよび隣の産業貿易センタービルでした。山下公園のすぐ前で、2日間ともさわやかな風の吹く日、海では何か舟関係のお祭り(?)をやっているようでした。

 例によって複数の会場で一般口演と特別講演やシンポジウムが並列して進む形式で、今回は一般口演はすべてパスしていろいろ勉強してきました。参考までに聴講した枠を書き出しますと、

1日目 臨床スキルアップセミナー 「固定性補綴装置の装着時のチェックポイント」
     臨床リレーセッション1 「少数歯補綴の問題点と対応-歯肉退縮と二次カリエスを中心にー」
     シンポジウム1 「メカニカルストレスに対する生体応答:補綴学的意義と展望」
     専門医研修会 「補綴歯科専門医に必要なCAD/CAMを応用した補綴歯科治療」
     イブニングセッション1 「臨床イノベーションのための若手研究者の挑戦:有床義歯治療と管理の新たな展開」

2日目 臨床リレーセッション3 「理想的なインプラント上部構造を目指して」
     特別講演 「Do we really need so many implants? A prosthodontist's view」
     臨床リレーセッション4 「審美的な補綴装置達成のためのティッシュマネージメント」

 最近体力がなくなり、大体どんなお話でも途中で意識がなくなってしまいます。それも最も重要な所で記憶が消えることが多く、たいへん困っています。しかし今回は、上記の中でイブニングセッションと特別講演はずっと聴くことができました。イブニングセッションは紹介された3人の研究とも非常に興味深いものでしたが、特にCAD/CAMを用いた総義歯の製作は大変驚きました。また特別講演は前アメリカ補綴学会会長のCarlo Marinello先生のお話でしたが、アメリカでの天然歯→インプラントへのリプレイスの風潮の激しさと、それに対する反省として今さらながら「歯を残そう」という掛け声があるとのこと、など驚きと、日本での現状の微妙なところに皆保険制度のありがたさと一部の先生方の方向性の危うさを感じました。

 さて、これ以外に今年も何故かポスター発表の審査を委嘱され、慣れないクラウン・ブリッジのポスターを何回も読みました。最初はどうするかわからないものの、何度も繰り返しみているうちに順番が付くものです。何とか2日目お昼までに投票することができました。
 またやはり非常に大人数の学会なので、なかなか話したい知り合いの先生とめぐり合うことが難しいです。それでも何人か、1年ぶりにお話をすることができ、楽しい時間を過ごせました。来年も福岡で会いましょう。

 ところでハプニング、1日目に泊まる予定だったホテルに夜到着すると、予約が無いとのこと。学会のせいで近くのホテルはみな満室みたいなので、途方に暮れました。何とか電車で大井町まで戻り、よく利用するアワーズイン阪急に泊まれました。帰ってメールを確認すると、1週間間違えていました。最近ポカが多くがっかりしています。

2012年6月 1日 (金)

2012年2月から5月まで

2月16日(木) 伊勢崎歯科医師会学術研修会 福島正義先生 「金属からの脱却をめざしたコンポジットレジン修復」
(新潟大学口腔保健学分野教授の福島先生による講演。レジン充填の今日の歯科に占める重要性や、長期経過、細かいノウハウなど多方面に渡るお話でした。)

2月19日(日) 東京医科歯科大学歯科同窓会CDE  鈴木哲也先生 鈴木哲也が語る「良い義歯、そうでない義歯」 -パーフェクトコンプリートデンチャー実戦編
(これは私は何度も行っている、総義歯の講演会です。少しずつバージョンアップしていらっしゃるようなので、なかなか聴き逃せません)         

3月4日(日) 日本ドライシンドローム学会発足記念 ドライマウスセミナー および 日本ドライシンドローム学会 設立記念講演会
(以前から参加して認定医にもなっているドライマウス研究会ですが、ドライアイ研究会と一緒に今回ドライシンドローム学会というのを立ち上げました。口、目の他に皮膚、鼻、ヴァギナ等などその他の器官の乾燥に伴う疾患、症状を対象とするものです。今回は基礎的な話から網羅的ながありました)

4月15日(日) ノーベルガイド導入コース  下尾嘉昭先生
(これについては別の記事で詳しく書きます)

4月25日(水) 伊勢崎歯科医師会口腔管理研究会 「BP製剤服用骨粗鬆症患者の一般歯科臨床における対応」 群馬大学医学部口腔外科 横尾聡教授
(近年問題になっているビスフォスフォネート製剤への歯科の対応について、最新の情報を提供して頂きました)

またまたしばらく更新をサボってしまいました。遅くなりましたが、一応2月から4月までの研修などを報告します。言い訳をしておきますと、私事ながら次男(一番下の子)の入試および入学があったため、私が何をやったわけではないのですが、何となくソワソワしていたのだと思います。またこれから筆不精に鞭打って、更新していきたいと思います。

2012年2月22日 (水)

2012年1月の記録

 もう2月も20日ですが、昨月の記録を残しておきます。
 お正月は4日まで休診でした。8日(日)には恒例の善光寺初詣に行って来ました。お昼は戸隠まで足を伸ばし、大久保の茶屋でそばを頂いて来ました。雪が多かったです。

 さて、1月21日(土)の午後には東京医科歯科大学歯科群馬県同窓会があり、午後休診にして参加しました。高崎のホテルメトロポリタンで3時から、例年どおり総会と学術講演会、懇親会がありました。講演会は同級生を呼ばせてもらいました。たまには基礎医学の話が聴きたいとの声があり、現在東京大学薬学部の教授をやっている一條秀憲先生を呼んで、「細胞がストレスを感じる仕組みと疾患」という話をしてもらいました。一條先生は医科歯科の口腔外科から病理に残り、大学院修了後にスウェーデンに留学して、その後母校の理工の教授を経て2002年から現職(東京大学大学院薬学系研究科細胞情報学教授)です。以前同期会で、群馬で何か話してクレイと頼んでおいたのですが、今年実現しました。とはいってもすっかりタダの歯医者頭になっているわれわれにはずいぶん難しい話でした。

 次の週末、1月28日(土)、29日(日)には高崎市の問屋町センターで群馬県歯科医学会がありました。私は幹事の一人なので土曜日は休診にしてお昼から準備に参加しました。土曜日の午後には教育セミナーがいくつか。最後に衛生士さん向けのセミナーがありましたが、うちのDHも2人参加しました。日曜日は朝早くから会場へ、両日とも記録の写真係だったのでずっと会場に張り付いていました。午後の特別講演は東京歯科の井上孝先生の「再生医療がインプラントを抜く日」という刺激的な演題でしたが、内容はよもやま話でした。今年は特に1日目が、非常に低調な人出でしたが、寒さの影響だけでしょうか。いろいろな意味で業界の沈滞が気になるところです。