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2008年6月19日 (木)

補綴学会2008

 ここのところ多忙で一週遅れてしまいましたが、補綴学会の報告をします。

 先々週金曜日の診療を終え、本庄早稲田から新幹線に乗って名古屋に向かいました。6月7、8日と名古屋国際会議場で行なわれる日本補綴歯科学会学術大会に参加するためです。ずいぶん便利になったもので、8時前の新幹線で10時代には名古屋駅に到着していました。
 補綴学会は専門医(認定医)を取得しているので、私にとってはメインの学会と位置づけています。もっとも大学では顎顔面補綴の教室に残り、補綴の中ではいってみれば傍流であり、教室の規模も違うしやっている研究の流れもまだ日が浅かったし、補綴学会はいつも憧れというか、コンプレックスを持って出ていた学会でありました。また今となっては、まだ大学にいたり他大学で偉くなっている旧知の先生と一年ぶりに顔をあわせる貴重な機会でもあります。

 補綴学会はもちろん学術団体でメインは大学の補綴の教室員ですが、開業医もたくさん抱えておりしたがってプログラムも研究発表のみならず様々なテーマに関わるシンポジウム、特別講演、教育講演など盛りだくさんです。主にこれらの講演を聴いて回ったのですが、印象に残ったものなどを記録します。

 特別講演「認知症の最新情報」(国立長寿医療センター、遠藤英俊先生)では、認知症について診断、治療技術およびそれを支える医療と社会システムの現在について、興味深い話がありました。認知症は誰でもかかりうる病気なので専門医だけでなく一般医が見つけられなければならない。早期発見のための診断技術も発達し、さらに早期発見によって進行を止める事ができるようになって来た。そのため、一般医を対象とした研修、サポート医の養成などの事業が行なわれてきている。また地域でサポートも重要である、などでした。

 シンポジウムⅠ「補綴歯科治療の何が問題で、なにを解決するか?」(座長、徳島大学、市川哲雄先生)は非常に抽象的なテーマですが、現在学会で行なわれている補綴治療に関するガイドラインに関連した重要な問題提起でした。補綴に限らず歯科において保険の評価の低さがいつも言われており、会場からはガイドラインの作成等も保険の壁がある中では絵に描いた餅という意見も出ました。しかしむしろエビデンスを持ったガイドラインができることが、その評価の向上に大きな力になる可能性があるということでした。

 シンポジウムⅢ(日本歯科保存学会、日本歯科審美学会、日本補綴歯科学会共催)「臼歯部修復の審美と強度を考える」では、前記2つの学会から講師を招き、充填、ホワイトニングなどのそれぞれの手法について話されました。現在最もホットな話題でありますが、毛色の違った演者によるアプローチの仕方の違いに興味深いものがありました。

 教育セミナー「患者の行動を変えるコーチング・コミュニケーション」(杏林大学保健学部、柳澤厚生先生)では、近年注目されている「コーチング」の手法について、非常にわかりやすい講演がなされました。医院の現場で患者さんに対して、スタッフに対して、などすぐにでも役立つことがありました。以前聴いたことがあるビジネス・コーチングの話に比べ、講師が医師であることから医療現場での応用が非常に具体的にわかり、勉強してみようと思いました。

 専門医研修会「顎機能障害の診断と発症原因を考慮に入れた治療」では、「発症原因をコホート調査から紐解く」「パラファンクションと顎機能障害の発症」「顎機能障害に対する一般的な診断と治療法」ということで3人の演者が講演しました。いわゆる顎関節症のことですが、まだまだ未解決の部分が多いのだという印象でした。それにしても昨今ネットでよくみる顎関節症の治療を目玉とする宣伝や、うちの近所にもある咬み合わせを治せば何でも治ると言うような歯科医院、むやみに術者の考える理想の咬合にもっていってしまう強引な治療、などあまりに危険極まりない代物が横行している現状に警鐘を鳴らすべきだと思いました。

 このほかにもいくつも講演を聴き、へとへとになって帰ってきましたが、何人かの旧知の先生にも会えて楽しいひと時でした。名古屋のまちの感想は次の記事で。

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