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2008年6月 3日 (火)

夜明け前

 数日前、島崎藤村の「夜明け前」を読了いたしました。私は若い時からけっこう読書をする方だと思うのですが、いわゆる小説というやつはとっても苦手でした。苦手というよりも、フィクションが何で面白いのか、という考えでした。高校の帰りなどずいぶん駅前の三光堂さんで立ち読みで粘ったり、また前橋の煥乎堂ではいつもこんなにたくさんの本があって死ぬまでに読めるのはどのくらいなのか、などと寂しい思いをしたりしていました。そんな中でも読むのはもっぱら文庫よりも新書、また文庫も思想哲学の類をわかりもしないのに読み漁っていました。

 それでもようやく大人になった最近、ようやく小説も読むべきものだなと思い始めた次第です。昨年の暮れから今年初めにかけては、話題の亀山訳「カラマーゾフの兄弟」を読みました。なかなか厳しかったです。それで。

 暮れに小諸の「中棚荘」という温泉旅館に家族で泊まったのですが、ここは島崎藤村ゆかりの宿で、ロビーの一角に書籍をはじめとしていろんな資料がありました。こじんまりとして暖かい雰囲気にあふれ、また料理も大満足な、たいへん好ましい宿でした。また「夜明け前」の舞台である木曽地方は御嶽山のお膝元ですが、亡くなった母方の祖父がたいへん熱心な信者であったことから私も何度か登頂し、自分でも興味があるというか、御嶽山信仰の末席に連なるものという自覚があります。それゆえ「夜明け前」と藤村にはもともと関心があったのでした。そんなことで今回中棚荘に泊まったことがきっかけで読み始めました。最初は話のテンポが遅い感じで、なんともだるいような気がしていたのですが、だんだんとこれまで知らなかった幕末から明治にかけての一般社会の変化や政治の中枢以外のことがよくわかり、たいへん興味を持って読み進めました。そして主人公半蔵の時代の流れと自らの立場と自分の希望との乖離にあせり、悩む姿が、他人事とは思えませんでした。読了してからさらに、いろいろと考えさせるものでした。

 これからも文学初心者として、いろいろ読んでみたいと思っています。

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