« 8月の報告 | メイン | CTの威力 その1 »

2010年9月11日 (土)

歯科小手術

 最近、歯根端切除術などの歯科小手術を行う頻度が高くなっています。通常、歯を保存する処置としては歯冠(歯)の方からアプローチして根管治療や歯周治療-いわゆる根の治療や歯石の除去など-を行ないます。すなわち歯根の中のかつて神経の入っていた空洞を清掃し、消毒してきれいに詰める、あるいはポケットの中の歯根の表面の歯石を除去したり、消毒や貼薬Photo_2 を行う、などです。

 多くの場合はこれによって解決するのですが、どうしても歯肉からの膿が止まらない、腫れが退かない、等の場合があります。その際、歯根端切除術(根管由来の病巣の場合)、歯周外科手術(歯槽膿漏の場合)などの手術が有効である場合があります。

 歯根端切除術とは、根の先に根尖病巣という治りにくい膿胞、肉牙腫などがある場合に行ないます。歯肉を切開して歯肉弁を翻転すると、多くの場合歯を支える骨の根尖部分に穴があいています。その内部の組織、内面の組織を掻爬し、さらに歯根の先端部を削りおとします。さらにその切断面から根の先の根管を詰める(逆根充)を行って、歯根に染み込んでいる細菌や病原性物質を除去、遮断します。きれいに洗浄して歯肉を戻し、縫合します。

 歯周外科手術とは、歯周病に罹患した歯の周りの歯肉や骨の形態を改善したり、組織を再生したりするための手術です。基本はフラップオペレーションといい、Photo_5 歯肉を切開して歯肉弁を翻転、根面と骨の欠損を明視下にし、根面から歯石などの汚染物質、ポケット内の不良肉芽組織などを除去して、フラップを戻します。これを基本として、手術の目的によってフラップを戻す位置を変えたり、歯肉を移植したり、歯周組織の再生のための材料を入れたりします。

 これ以外にも囊胞の摘出や骨内の異物の除去など様々な小手術がありますが、要するに「よく分からない場合、直視して解決しよう」ということが大きいと思います。なかなか治らないポケットを開いてみると、歯根の表面に亀裂が入っていたり、根尖病巣が立体的に広がっていたりする場合などが、多くあります。必要性が大きな歯の場合、いきなり抜歯するよりも(ダメもとでも)手術により改善されればということがあります。

 私は補綴系であるため、大学にいたときには特に手術的なトレーニングをうけたわけではありませんが、その必要性はずっと理解しており開業後も独学的に比較的抵抗なく小手術は手がけてきたつもりです。しかし近年インプラントを行うようになってから、オペに対する抵抗はさらになくなりました。様々なインスツルメントや機器、オペのシステムを確立出来たせいもあると思います。また昨年設置したCTを使うことによって、あらかじめかなり正確に病態や手術法を予測することができるようになりました。

 患者さん側にも手術というと抵抗のある方がいらっしゃいます。確かに口腔も顔面の一部であり、感覚も鋭敏なところなので、恐れを感じる方は多いと思います。しかしながらちょっとした手術によって非常に大事な歯を残すことができる場合があります。私もより安心、安全確実な治療を心がけようと思っています。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.kazelog.jp/t/trackback/233039/25033621

歯科小手術を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿