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2011年1月19日 (水)

CTの威力 その2

 歯科CTといえばインプラントの診断がすぐに思い浮かばれますが、それ以外にも非常に活用でき、大きな威力を発揮します。残念ながら解像度、すなわち画像の細かさは通常のレントゲン、なかでも銀塩フィルムには到底及びませんが、自由な方向から見られる、自由な断面でカットできる、3D表示で実感的に見られる、などの特性でYonemoto1見られなかったものが見れます。

 例えば埋伏智歯、すなわち骨に埋まっている親知らずが、下顎管という太い神経・血管の通り道に近接している場合があります。このような親知らずを抜歯しなければならない場合、平面的なレントゲンでは重なってしまうためにどのような位置関係にあるか実態が分からない場合があります。

 この時、CT撮影によって実際に近接しているのか、それとも離れているのか、また立体的にはどのような位置関係にあるか、等を見ることができます。左の症例では通常のレントゲンでは親知らずの紫根と下顎管が重なっているように見えましたが、実際は立体的に離れていました。さらに位置関係が3次元的に把握できたことから、安全かつ手際良く抜歯することができました。Kozima1a_3

 通常の根尖病巣の見え方もだいぶ異なります。同じ歯の、左は通常のレントゲン、右はCTによる断層像です。通常のレントゲンでも病巣の存在は見えますが、CTによる画像でより確実に見ることができます。特に複数の根がある歯では、通常のレントゲンでは根が重なって見えてしまKozima4074_3210136うため、ワケがわからないことがあります。CT像ではこれが分離して見られるため、はっきりと分かる場合があります。さらに病巣の広がりも、立体的に把握することができ、根管からのアプローチ、外科的なアプローチいずれにおいても非常に役に立ちます。

 

 

2011年1月10日 (月)

CTの威力 その1

 一昨年の11月1日に念願の歯科用コーンビームCTを購入、設置し速報記事を書きましたが、それから早くも1年余りが経ちました。正直大変高価な買い物でしたが、その威力は絶大です。外科系である歯科医療には「見える」ことは非常に重要であり、これまでの通常のレントゲンでは見えなかった部分が如何に多かったということを感じています。

 まずはインプラント治療に関して。それ以前も多くの症例で市民病院にCT撮影を依頼していましたが、医科用のヘリカルCTでは解像度が不十分、被爆量が大きい、Gotoh1aGotoh5撮り直しができないなどの問題がありました。したがって、手術後の確認や予後の評価などの撮影は不可能でした。CTを入れたことで、これらの問題が解決しました。当院でインプラント治療を始めた5年ほど前はCTを撮ることさえもインプラントの初心者で慣れていないからだ、という風潮さえありました。しかしちょうどインプラント計画用のシミュレーターソフトの後発品で比較的廉価なものが出始め、また医科用のCTをパソコン上で見るためのフリーのビューワーが出回ったりし始めたこともあり、私もどこで撮ってくれるのかを探して伊勢崎市民病院に依頼する筋道を作ったりして、必要な患者さんでは積極的に撮影を依頼していました。この期間においていろいろCT画像の扱いに慣れたことで、自院に入れたときにスムーズに使うことができました。

 インプラントを取り巻く環境はここ3年、5年と非常に変化が早く、現在ではむしろCT撮影をしないインプラント治療はあり得ないという風潮になっているようです。前述のように手術後や予後の評価のことを考えると、自院のCT設置も常識になってくると思います。