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2008年5月 5日 (月)

総義歯のつくりかた3

 さて、型を取ったら次にやることはかみ合わせの記録です。これを「咬合採得」といいます。すなわち咬んだ時の上下の顎の正しい位置関係を記録することです。残っている歯がある程度多い補綴物ならば、そのかみ合わせによって上下の顎はきちんと位置が決まります。しかしながら歯の数が減ってくると、だんだんと不安定になってくるのです。総義歯の場合は上下の顎の位置関係が不定であるのみならず、その空間中のどの位置に歯を並べたらよいかも全く自由になってしまいます。

 そこで何かを目安にして歯並びと咬み合わせの位置を決めることになります。現在使っている義歯があればそれを目安にするのが最も安全な方法です。それが叶わない場合は、口腔内の解剖学的な目印、唇の周りの張り具合、顔の長さ、患者さんの感覚などを目安にします。

 この咬合採得は、印象以上に患者さんの動きや感覚に左右されることが大きいため、難しいステップです。咬み合わせの高さ、すなわちどの程度上下の顎を近づけたときに歯があたるようにするかは、非常にあいまいです。したがって患者さんの許容範囲も比較的大きいのですが、それも個人差が大きく大変難しい場合もあります。左右前後の位置関係は結構シビアな範囲に収めなければいけないのですが、患者さんに顎を動かしてもらう作業なので、やはり狂いやすいといえます。

 そこでもうひとつの作業を加えます。それはゴシックアーチトレーシングという方法で、ちょっとした装置を用いて顎の運動を記録し、咬み合わせの位置を決めます。教科書的にはひとつのステップとして載っているものの、なかなか実施している先生は少ないようです。しかし私はこれが結構「キモ」だと思っており、患者さんに1回多く来て貰わなければならないものの、必ず行なうようにしています。

 よく言われることですが、印象採得と咬合採得が正しいことは補綴物を作るために必須な2条件です。しかし総義歯の場合はいずれもある程度のあいまいさが付き纏います。そんな中で敢えてどちらがより重要かと言われれば、咬合の方だとされます。咬合がきちんとしている義歯はだんだん合ってくるが、印象がよくても咬合がダメだとだんだん合わなくなってくると言われています。

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