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2008年5月 4日 (日)

総義歯のつくりかた2

 新年度の忙しさ等にかまけて続きが遅れてしまいました。さて、具体的に総義歯の作り方の大変さ等をボチボチ書いていきたいと思います。

 何となくお分かりと思いますが、総義歯に限らず何かの補綴物を作るときはまず「型取り」をします。この「型」のことを「印象」、型をとる事を「印象採得」といいます。総義歯の印象採得では、歯のない顎の形をとることになります。歯が無い顎の部分は内部に骨があり、その表面を筋肉や腱、唾液腺と粘膜が覆っています。その一部は骨に固く結びついていますが、外側に移るにしたがって頬や舌の粘膜となり柔らかくて動く様になっています。そのため型を取るといってもとり方によってどのような形にも変わってしまいます。ですから総義歯の場合の印象採得は型を「作る」と言った方がふさわしい作業です。

 実際にはまず普通の型取り材で概形を取ります。この概形から起こした石膏模型をよく見て個人トレーという印象するための「お皿」を作り、それを使って精密印象を取ります。このトレーを実際に口の中に入れ、噛んだり口をすぼめたり舌を出したり運動をさせ、長いところは削り短いところは足して、形を作ります。そこに細かいところまで再現できる型取り材を流して、精密な印象を取るのです。

 この時、ひとつは口腔の機能運動によって動いてしまう部分を避けるように、形を小さくしたい方向があります。もうひとつは義歯と顎との間に空気が入らないで義歯が吸着するように、また噛み合わせの力をできるだけ広く分散させるために、形を大きくしたい方向があります。
この相反する二つの方向の釣り合う点、妥協点を目指して形を作ることになります。その際に必要なのがわれわれの解剖学の知識、患者さんの運動の誘導の仕方、そして正しい義歯の形のイメージなのです。

 このようにしてとった印象から、石膏の模型を作ります。これが技工操作で義歯を作っていくベースになります。しかしながら患者さんの顎は柔らかい粘膜でできており、さらに場所によって粘膜の厚みも異なるため硬さもまちまちです。いっぽう模型は均一に硬い石膏でできています。また実際は顎の粘膜は動く部分もあるわけで、形態としてもある一瞬の状態が再現されているにすぎません。この辺が完成した義歯を装着した時に問題となるところのひとつであり、難しいところです。

 

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