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2011年2月11日 (金)

CTの威力 その3

 CTによって、口腔外科的な疾患の確定を行うことももちろんあります。というか我々開業医の立場としては、大学病院等の口腔外科専門医へ送るべきかどうかの確定と、さらに患者さんへの説明に用いることができますFukasawa2

 患者さんは下顎の総義歯が合わなくなったということで来院したのですが、どう見ても通常の「合わない」状態ではありませんでした。通常のパノラマX線写真(左)でも不明瞭な不透過像が下顎骨に見られたのですが、Fukasawa2917_0903000 CT(右)を撮影してみると明らかな病変とその広がりが分かり、囊胞性の病変だろうと診断されます。患者さんにも画像を見て頂いて納得してもらい、病院歯科口腔外科に紹介しましたが、やはり下顎囊胞ということで治療されました。

 またこの患者さんは、痛みはないものの上顎の大臼歯部(歯の欠損部)が腫れ、膿が出たとSaegusa1 いうことで、内科を受診したあとに来院されました。かなり以前に蓄膿の手術をしたということで、術後性頬部嚢胞が疑われましたが、CTを撮影してみるとやはり上顎洞に異常が認められました。かつての蓄膿症の手術(上顎洞根治手術)あとになって骨の中に嚢胞ができる事が多いのです。特にこの患者さんの場合、上顎洞頬側の骨が一部消失してしまっており(写真右)、そこから内容物が口腔内に漏れでてきたのではと推測されました。近所の耳鼻科の先生にCTを見て頂き、治療を依頼しました。

 ところで根管治療(根の治療)のためにCTの撮影を重ねてくると、上顎の歯に関してこれまTakeda2 で考えていたよりずっと多く、上顎洞に影響を及ぼしている(様に見える)歯が多いということに驚いています。もちろん以前から教科書的な常識としても、上顎臼歯は根尖(歯の根の先端部)が上顎洞(右の写真で黒く見えるところ、頬部の骨の中の空洞で、鼻の奥につながっており、蓄膿症の時に膿がたまる)に近い場合が多いことはわかっていました。また右のように根尖と上顎洞の間がほとんど接している場合もあり、抜歯によって穿孔(穴があいてしまう)したり歯性上顎洞炎といって歯髄の感染が原因の副鼻腔炎(蓄膿など)が起こることも承知していました。しかしながら右の写真のように症状がなくても上顎洞の粘膜が肥厚していたり、何らかの炎症の徴候が見られる場合が非常に多いことを実感しています。この写真のように非常に接している場合のみならず、根尖と上顎洞の間にある程度骨がある場合でも見られます。

 このような症状のない上顎洞粘膜の兆候はどうするべきか、積極的に歯の治療を行ってさらに粘膜の状態を観察するべきなのか、等これから研究していくべき問題だと思います。CTによって様々な病変が、今までに比べて手に取るように分かる場合がある、今まで見えなかったものが見える場合がある事を運用1年で実感しています。見えれば即治療できるかといえば、それは必ずしも言えませんが、何よりもまず「見える」ことは治療の最初の一歩であると思います。これからも必要に応じて積極的にCTを活用していきたいと思います。

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