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2011年4月 9日 (土)

新年度の挨拶

 今年は大変な年度はじめになりました。今回の震災で被災された方々にお見舞い申し上げます。当院では新人DHも迎え、無事新年度を迎えています。今年の抱負を含め、以下年度最初のミーティングの資料を改変して掲載しました。

木田歯科医院 2011年度 年頭に当たって

 未曾有の大被害をもたらし、いまだ原子力発電所をはじめ多くの問題をひきずっている311日の地震からもうすぐ一月になります。診療中に遭遇した地震の揺れも初めての経験で驚きましたが、その後の計画停電、ガソリンをはじめとした物流の滞り、世間の自粛ムードなど、直接の被害を受けなかった私たちにさえ多くの影響があり、精神的、肉体的にも大きなストレスとなりました。また診療時間のシフトやそれに伴う約束時間の変更、仕事の手順の変更など患者さんはじめ関係各位に多くの迷惑をかけており、院長として感謝の念に絶えません。

 先日の日本歯科医師会からの情報によれば、今回の震災によって亡くなった会員が5名、被災して診療が出来なくなった診療室はまだ調査も出来ないほどであり、おそらくスタッフの方の被災もそれ以上とおもわれます。また遺体の身元調査や避難所での口腔ケアに活躍されている先生方もいます。それどころか連日伝えられている被災地の惨状、避難所の様子、さらには福島原発の周辺地域から避難されている方々を考えると、自分たちが直接の被災者にはならなかった幸運と、何の落ち度もなく被災された方の不条理を思わざるを得ず、また同じ日本人として毎日心の休まる日がありません。また捜索や復旧、避難所の運営、原発事故への対応などに努力されている自衛隊、警察、消防をはじめ公務員やボランティアの方々の活躍を見るたびに、本当に頭の下がる思いなのはほとんどの方が同じだと思います。とはいえ直接被災しなかった私たちとしては、日本全体の経済、社会を維持するために通常の仕事をきちんと行っていくことが、社会に対する責務であると考えています。

 さて、当院の現況について考えれば、昨年11月には開院50年を迎え、私自身も3月で齢50歳になり、また大学から伊勢崎に戻ってきてから20年という節目の年でもあります。振り返ってみれば私が大学を卒業する当時、すなわち四半世紀以上前から「これからの歯科は厳しい」と言われ続けていました。原因はいろいろありますが、まずは歯科医院、歯科医師数の過剰。東京をはじめ都会ではもちろんのこと、たとえばこの田舎の伊勢崎でも、私が帰ってきた当時に比べても歯科医院の数は2倍以上になっています。また患者さん個人、社会全体の予防に関する意識の向上などにより、特に小児の虫歯の数が激減しています。さらに医療全般に対する社会の見る目が厳しくなり、健康保険の請求に関する厳格化や指導の強化、また感染予防など医療安全に係わる費用労力の増大などが歯科医院の経営を圧迫しているといわれています。

 しかしこれは反面、歯科に係わる疾病構造の変化や患者さんの要求の増大などにより、より「近代的な」歯科医療のニーズが高まっているという事でもあります。また経済的な理由や歯科では直接生命に係わらない場合が多いこと、また過去の虫歯洪水時代の治療に対するトラウマなどにより、歯科疾患に関する受診率は実は低く、有病のまま口腔内を悪化させていく患者さんも少なくないようです。

 このような中で多くの歯科医師、歯科医院がこれからの生業に関して模索を続けており、中には私たち歯科に係わる者から見れば「こんなことを」と疑問に思われることを行う同業者も現れています。振り返ってみれば私が帰ってきた20年前の臨床では感染予防に対する意識も低く、歯周病に関してもプローブやハンドスケーラーのセットもなく、ブラッシング指導などについてくる患者さんもなかなかいらっしゃらないような状況でした。当院ではそんな状況から一歩一歩、スタッフのサポート、努力や患者さんの理解を進めて、現在の臨床を築いてきたつもりです。しばらくはずいぶん患者数も減少し危機的な時期もありましたが、近年やっと当院の臨床にあったニーズを持つ患者さんが来院するようになってきたのだと思います。

 さて、年度初めから計画停電等で通常の診療体制から逸脱しましたが、徐々に落ち着いた状況に戻ってきました。またこのような節目の年に当たり、やっと現在の当院本来の衛生士3人の体制が充足しました。スタッフの協力を得て、またお互いに研鑽を積んで、さらに充実した診療を提供していきたいと思っています。


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