2012年1月 4日 (水)

2012年頭の挨拶

新年のご挨拶(年賀状から)
 何を言っても震災の衝撃と影響に終始した昨年。自分にとっても何度も旅行や登山で訪れた東北地方だけに、非常に重いものがあります。//(中略)/昨年の遠出はみな家内と娘との3人連れでした。5月の連休は凹凸の激しい東北道を通って会津へ。平安の古寺と遅い桜を見て歩きました。夏休みは御嶽山と飛騨高山へ。御嶽山は8合目の山小屋泊まりで天気にも恵まれ、ご来光を拝んで頂上の御池巡りまでできました。会津も高山も木工芸の盛んなところ。娘の向学と就職のためと理由付けて自分の好きなショールームめぐりをしました。/音楽でのトピックは何と言っても前橋交響楽団と鶴ヶ島シティーオーケストラの合同演奏会。幹事会などのための何度かの鶴ヶ島への往復や2度の演奏会は大変でしたが、マーラー第1番(巨人)は何物にも代え難い貴重な経験でした。またマーラーは私にとって非常に思い入れの強い作曲家であり曲目であり、娘にデザインさせたチラシやポスター、またプログラムの原稿など事前に力を入れすぎたせいか、残念ながら本番の演奏はイマイチでした。まあ、そんなものでしょう。/また6月の合唱団すいせいへにゲスト出演し、貴重な経験をさせて頂きました。いずれも音楽の仲間に感謝です。/医院には4月から新しい職員が入り、衛生士3人、助手1人の体制で頑張っています。秋にはエンド専門医澤田先生の2日間のマイクロエンドのコースを受講。今年はいよいよ顕微鏡をいれてマイクロに挑戦する気満々です。今年もペリオをベースとした補綴専門医という医院の特色を掲げて真面目に臨床に取り組んでいきたいと思います。/6月には補綴学会参加に広島へ行って来ました。今回はポスター発表の審査員も仰せつかり、金曜夕に出て2泊の強行軍でしたが、谷口教授はじめ顎補綴の人たちと夕食を共にすることができ、充実した2日間でした。//今年はぜひとも穏やかな1年でありますように。本年もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。

 

2011年12月 9日 (金)

補綴学会市民フォーラム2011

 11月23日(水、勤労感謝の日)の午後、日本補綴歯科学会関越支部会主催の市民フォーラムを行いました。会場は高崎駅東口のヤマダ電機LABI1高崎のホール、LABIGate。群馬県歯科医師会が後援という事で、また実質的には群馬県歯科医学会の役員である宮下先生と私が関越支部会の理事でもあることから、「今年は市民フォーラムを群馬県でやってもらおう」ということで昨年から働きかけ、準備してきたものです。講師は新潟大学の補綴の魚島勝美教授で、私の大学の同期生であり、これまでも歯科医学会や同窓会でお世話になった(お世話をした?)仲です。私は座長をやることになりました。
 補綴学会では活動の一環として、一般の方々向けに歯科治療、なかでも補綴治療についての講演会を行うよう、推奨しています。歯科治療全般に言えることですが、患者さんが治療についてある程度の知識を持ち理解していることが非常に重要です。セルフケアが必須となる歯周病の治療に関してはもちろんですが、補綴の分野でも補綴物の取り扱いや補綴物の機能、メインテナンスなどに関して、患者さんの協力を得ることが必要です。さらに言えば、(当院の治療方針にもあるように)歯科治療は口腔の健康を取り戻し、保つための患者さんとわれわれ歯科医療従事者の共同作業なのです。Dsc_0004_2

 ということではありますが、午後12時に集合して会場の準備、講師の魚島教授や教室の人たちが到着して受付を始めましたが、お客さんは全然来ない。「やめて飯にするか」、などと言っている間に、三々五々集まって来ました。とはいっても結局20人程度、そのうち半数くらいは歯科関係者という寂しさでした。                           

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  魚島先生の話の内容は、ごくごくまともなものでした。要するに前述のような考えに基づき、歯科の治療特に補綴治療について説明されました。私たちには非常に分かりやすくきちんとまとまっていたと思いましたが、会場に来ていた知り合いのおばあさんの感想は、ちょっと難しすぎたようでした。現に治療している患者さんへの説明さえもわかってもらえるのは難しいのですから、この様に一般他人がみんなわかるようにする説明は困難だと思います。

 また、今回はヤマダ電機のチラシにこのホールでの催し物案内が出るということで、その効果に期待していました。それ以外には県歯科医師会の会員にはA4版1枚のチラシが諸連絡とともに配られただけでした。残念ながらチラシのこのような講演会では集客効果は殆ど無いことがわかりました。ちなみに前日に行われた「お笑いライブ」ではほぼ満席だったそうです。やはり市の広報や新聞の地方面などの硬いところに宣伝しなければダメでした。

 さて、終了後に遅い昼食会がありました。県歯会学会から私を含めて4人、魚島先生の教室の人が彼を含めて4人で、狭い世界ではありますが情報交換と楽しいひとときを過ごすことができました。

 

2011年12月 8日 (木)

AHAガイドライン2010

 11月19日(土)の夜、県歯科医師会館にて前橋市歯科医師会医療安全講演会が行われました。この週は木曜日にコーチングの研修会があり、従業員を出席させたために土曜日を振り替え休診にしました。そのため昼間は休んだのですが夕方から前橋に行って来ました。
 内容は「新ガイドラインの理解と歯科医院における実践」ということで、新潟大学大学院歯科麻酔学分野教授の瀬尾憲司先生が講演されました。瀬尾先生が以前書かれた「劇画でみる これだけはしてほしい歯科医院の緊急対処」という本で知っていたのですが、これは薬剤などの種類を極力少なくし、アルゴリズムで緊急時の対処を分かりやすく説明する非常に実戦的な本で、一度お話を聴きたいと思っておりました。
 新ガイドラインとは、AHA(アメリカ心臓協会)が定めた救命救急のガイドライン2010のことです。以前私自身が県歯の実習で研修したのはその前の2005であり、5年を経て改定されたものです。門外漢の私がここでそれを解説しても仕方がありませんが、(タイトルを見て読んでくださっている人がいると仮定してとっさの時に役に立つかもしれないので)先生が揚げられたポイントは、1.認識:「見て、聞いて、感じて」は不要、反応なし、呼吸なしもしくは正常の呼吸ではない、脈のチェックは一般人は不要。 2.CAB(not ABC):心停止の認識から10秒以内に胸骨圧迫を開始すべき。 3.ハンズオンリーCRP 4.質の高いCRP 5.チームアプローチ。ということでした。

 また歯科医院での実践ということでは、前著と同じく極力薬剤等の種類を少なくし、おそらく普通の歯科医師として一生に一度出会うか出会わないかという緊急の場面(出会いたくない!!)に対処できるように、簡潔な手順を示されました。

 講演の中では実際の事故における救命救急の場面の映像や、AEDに記録された心電図と録音を並行して流す場面もあり、臨場感と言うか実際の状況ではこんな感じなのか、と目を見開かされるところもありました。非常に新鮮で有益なご講演でした。

 残念ながらその帰り、県歯駐車場の暗がりで車止めに躓き、両手をついてひっくり返って非常に痛い思いをしました。肩こりなど後を引いておりますが、救急車のお世話になるほどでなかったのが不幸中の幸いでした。

2011年12月 6日 (火)

コーチング研修会2011

 11月17日(木)午後3時より、私たち伊勢崎佐波歯科医師会医療管理委員会主催で研修会「コーチングを活用した歯科医院の活性化 その2」を行いました。主に私自身が企画した研修会で、昨年の続編として再び歯科衛生士の石田恵子先生をお呼びしました。
 この日は当院では午後スタッフを出すため、午前中診療とし代わりに土、日の連休としました。診療を急いで終えて本庄早稲田駅に講師を迎えにあがり、会場の伊勢崎市民プラザに向かいました。今年はみんな研修疲れか、木曜日の診療が増えたのか、良い季節だからなのか、参加申し込みがだいぶ少なかったのですが、逆に深く掘り下げて実習などが出来るという講師のお話だったので、そのようにお願いしました。

 今回もはじめから実習モードの会場の配置、すなわち机を端に寄せて椅子のみとし、まずはパワーポイントでコーチングの概要について講義がありました。先生の考える「コーチングの3要素」は質問技法、傾聴技法、個性認識です。昨年は主に「傾聴技法」について実習を行いましたが、今年はまず「個性認識」についてエニアグラムの実習を行いました。用意した画用紙にクレヨンで「誰かがケンカをしていることから思い浮かぶ絵を書いてください」という課題が出されました。時間内に描いた絵を発表し、それから大体の個性を幾つかのタイプからどれに当てはまるかに分け、それぞれのグループや違ったグループ間で話し合いを行いました。自分や他人のこれまでと違った個性の面がわかって、興味深い実習でした。Dsc_0087

 ついで昨年同様に傾聴技法について実習。話す、聴く時の態度や声掛けによっていかに話す側の負担や気持ちが違うかを、大いに実感することができました。最後には今回の研修の感想を輪になって発表し、そして記念撮影をして研修を終えました。

 その後医療管理委員との懇親会に付き合っていただき、様々な話しや情報交換を行うことができました。富沢担当理事の考えで、来年も是非お願いしたいということで、第3部を行う事になりそうです。

2011年11月20日 (日)

口腔がん検診

 11月6日(日)、伊勢崎市民文化会館で伊勢崎佐波歯科医師会による口腔がん検診が行われました。昨年秋から何度かの研修会、群馬大学口腔外科での研修、検診時のシミュレーションなどの準備を経て行われました。群馬大学口腔外科と県立がんセンターから5人の先生をお呼びし、あらかじめ申し込んでいた60余の方が検診を受けました。ここまでシステムを構築して実行された歯科医師会執行部の先生方に敬意を表し、感謝致します。

 5つのブースに分かれてそれぞれ1人の検診医と3人の協力医がついたのですが、自分のブースで診ていた限りでは、舌痛症やドライマウスで症状がありがんを恐れている方が多いと思いました。これらの不定愁訴を何とか多くの歯科医院で解決出来るようになっていくことが患者さんの幸福につながると思いました。

 私自身としては検診医5人のうち3人もが顎補綴の患者さんを紹介いただいている知り合いの先生だったので、疲れましたが楽しい時間でした。

2011年11月 2日 (水)

澤田先生のマイクロエンドコース

 しばらく更新をまったくサボっておりました。申し訳ありません、6月から5ヶ月ぶりの復活です。

 去る10月29,30日、土曜日を休診にしてタイトルのコースに参加してきました。澤田先生は東京医科歯科大学の3年下、歯内療法の教室に残り、ペンシルバニア大学留学を経て、平成14年から日本では数少ない歯内療法専門医として、東京で開業されています。数年前に医科歯科大同窓会の講演会を聴き、目からウロコの思いをしたのですが、その時実習コースとして紹介されていました。人気のコースで半年以上前に申し込み、この日を迎えました。

 上野のモリタのセミナールームで、受講者10人の一人に一台づつ歯科用顕微鏡を備え、講義と実習の波状攻撃で休む暇もなくコースが進みました。既に顕微鏡を持っている人が多かったのですが、私の立場としては自分の臨床に顕微鏡を取り入れることが出来るか、取り入れる価値があるかを見極めようと思っていました。じっくりと歯科用顕微鏡の世界を堪能でき、その答えはほぼ◎だったのですが、すでに使っているニッケルチタンファイルや通常の根管形成に関しても、スライドに何度も出てきた「Seeing is bilieving」のとおりずいぶんと学ぶ所があり、極めて充実した2日間でした。また1日目の昼食時の自己紹介タイムや懇親会(居酒屋にて)で他の受講生や講師の先生と親しく話すことができ、これも大変役に立ちました。澤田先生有難うございました。

 これまでも自分なりに勉強して、歯内治療に関しても日々レベルアップし、歯科世間の一般的水準よりはずいぶんきちんと行なっているつもりでした。それは間違いないと思いますが、それでも顕微鏡の導入を含めまだまだ頑張らなければならないと痛感しました。

2011年5月29日 (日)

補綴学会2011

 去る5月20日(金)~22日(日)にかけて日本補綴歯科学会総会と学術大会がありました。今年は第120回の記念大会で3日間の日程でしたが、私は土曜日から参加しました。場所は広島国際会議場で、金曜午後の診療を早めに終え、本庄早稲田駅5時過ぎの新幹線で広島に向かいました。広島は遠いですが、でも新幹線を乗り換えて合計5時間余で着いてしまうのですから早いものです。10時過ぎに駅近くホテルに到着しました。

 国際会議場は広島平和記念公園の一部なので、土曜の朝は少し早く出発し市電で向かいました。始めて見た原爆ドーム、慰霊碑など映像で見慣れたものを実際に見ると、またこの広大な中洲が市街地だったことを考えると、心に感ずるものがありました。

 今回の学会は理事長が交代する時期で、その理事長講演でも触れられたのですが、研究すなわち大学と臨床との乖離を埋めるということが一つの大きな目標としてあげられていたようです。そのため「臨床リレーセッション」というシンポジウム形式の講演が1~5まで設けられ、著名開業医の先生の臨床に重きをおいた話をずっと聞くことが出来る様になっていました。大体3つの会場で並行して口演が開かれていました。一応報告(かつ自分の記録)として私が聴いたセッションを記しておきます。

 1日目9:00~11:00臨床リレーセッション1「クラウンブリッジアップデート」/11:10~12:10理事長講演「補綴歯科の歩みと未来」/14:00~16:00臨床リレーセッション2「欠損歯列を読む:治療結果に影響する因子を探る」/16:10~18:00シンポジウム2「補綴歯科治療に潜むドグマ」 2日目9:00~11:00臨床リレーセッション4「インプラントを用いた欠損補綴歯科治療の展開」/11:10~12:10特別講演「新しい時代の医療・介護の連携」/14:00~16:00専門医研修会「補綴歯科専門医に必要な顎顔面補綴治療」 以上。

 臨床リレーセッションは有名どころの開業医の先生が講師だったのですが、学会でのプレゼンということでなのか今ひとつという感じでした。「補綴歯科治療に潜むドグマ」が今回興味深く考えさせられるシンポでした。超かい摘んで言ってしまうと昔からの思い込みでやっている臨床がたくさんあるのではないかという問題提起でしたが、特に補綴のような治療においては科学というよりもアート的な要素、患者さんに対するプレゼン的な要素などが治療結果に多く影響すると思われ、それをも含んだ評価まで行うことが必要なのではと思いました。

 また今回は関越支部から頼まれてポスター発表の審査をしなければなりませんでした。特にあまり馴染みのない分野だったので、抄録と展示を何度も読みなおして何とか投票しました。おかげでポスターを見ている時、ここ何年かお話できなかった谷口教授に行き会うことができ、さらに1日目の夕食を顎治の医局員の皆さんと共にすることができました。もはやもちろん重なって在職していた人は教授だけでしたが、有意義な時間を過ごすことができました。

2011年4月 9日 (土)

新年度の挨拶

 今年は大変な年度はじめになりました。今回の震災で被災された方々にお見舞い申し上げます。当院では新人DHも迎え、無事新年度を迎えています。今年の抱負を含め、以下年度最初のミーティングの資料を改変して掲載しました。

木田歯科医院 2011年度 年頭に当たって

 未曾有の大被害をもたらし、いまだ原子力発電所をはじめ多くの問題をひきずっている311日の地震からもうすぐ一月になります。診療中に遭遇した地震の揺れも初めての経験で驚きましたが、その後の計画停電、ガソリンをはじめとした物流の滞り、世間の自粛ムードなど、直接の被害を受けなかった私たちにさえ多くの影響があり、精神的、肉体的にも大きなストレスとなりました。また診療時間のシフトやそれに伴う約束時間の変更、仕事の手順の変更など患者さんはじめ関係各位に多くの迷惑をかけており、院長として感謝の念に絶えません。

 先日の日本歯科医師会からの情報によれば、今回の震災によって亡くなった会員が5名、被災して診療が出来なくなった診療室はまだ調査も出来ないほどであり、おそらくスタッフの方の被災もそれ以上とおもわれます。また遺体の身元調査や避難所での口腔ケアに活躍されている先生方もいます。それどころか連日伝えられている被災地の惨状、避難所の様子、さらには福島原発の周辺地域から避難されている方々を考えると、自分たちが直接の被災者にはならなかった幸運と、何の落ち度もなく被災された方の不条理を思わざるを得ず、また同じ日本人として毎日心の休まる日がありません。また捜索や復旧、避難所の運営、原発事故への対応などに努力されている自衛隊、警察、消防をはじめ公務員やボランティアの方々の活躍を見るたびに、本当に頭の下がる思いなのはほとんどの方が同じだと思います。とはいえ直接被災しなかった私たちとしては、日本全体の経済、社会を維持するために通常の仕事をきちんと行っていくことが、社会に対する責務であると考えています。

 さて、当院の現況について考えれば、昨年11月には開院50年を迎え、私自身も3月で齢50歳になり、また大学から伊勢崎に戻ってきてから20年という節目の年でもあります。振り返ってみれば私が大学を卒業する当時、すなわち四半世紀以上前から「これからの歯科は厳しい」と言われ続けていました。原因はいろいろありますが、まずは歯科医院、歯科医師数の過剰。東京をはじめ都会ではもちろんのこと、たとえばこの田舎の伊勢崎でも、私が帰ってきた当時に比べても歯科医院の数は2倍以上になっています。また患者さん個人、社会全体の予防に関する意識の向上などにより、特に小児の虫歯の数が激減しています。さらに医療全般に対する社会の見る目が厳しくなり、健康保険の請求に関する厳格化や指導の強化、また感染予防など医療安全に係わる費用労力の増大などが歯科医院の経営を圧迫しているといわれています。

 しかしこれは反面、歯科に係わる疾病構造の変化や患者さんの要求の増大などにより、より「近代的な」歯科医療のニーズが高まっているという事でもあります。また経済的な理由や歯科では直接生命に係わらない場合が多いこと、また過去の虫歯洪水時代の治療に対するトラウマなどにより、歯科疾患に関する受診率は実は低く、有病のまま口腔内を悪化させていく患者さんも少なくないようです。

 このような中で多くの歯科医師、歯科医院がこれからの生業に関して模索を続けており、中には私たち歯科に係わる者から見れば「こんなことを」と疑問に思われることを行う同業者も現れています。振り返ってみれば私が帰ってきた20年前の臨床では感染予防に対する意識も低く、歯周病に関してもプローブやハンドスケーラーのセットもなく、ブラッシング指導などについてくる患者さんもなかなかいらっしゃらないような状況でした。当院ではそんな状況から一歩一歩、スタッフのサポート、努力や患者さんの理解を進めて、現在の臨床を築いてきたつもりです。しばらくはずいぶん患者数も減少し危機的な時期もありましたが、近年やっと当院の臨床にあったニーズを持つ患者さんが来院するようになってきたのだと思います。

 さて、年度初めから計画停電等で通常の診療体制から逸脱しましたが、徐々に落ち着いた状況に戻ってきました。またこのような節目の年に当たり、やっと現在の当院本来の衛生士3人の体制が充足しました。スタッフの協力を得て、またお互いに研鑽を積んで、さらに充実した診療を提供していきたいと思っています。


2011年2月24日 (木)

平成22年度東京医科歯科大学群馬県歯科同窓会

 2月5日(土)の午後、群馬県の東京医科歯科大学歯学部同窓会がありました。先週に引き続き土曜を半日にして、高崎駅のホテルメトロポリタンに向かいました。毎年総会の前に講師の先生を呼んで講演をしてもらうのですが、今年は私の同級生で新潟大学教授(大学院医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野教授、医歯学総合病院インプラント治療部部長)の魚島勝美先生に講演を頼みました。
 魚島君は以前のブログ、HPに掲載してある「私のインプラント事始め」にあるように、なかなか厳しい経歴を経てきた人です。群馬県には関越支部会、歯科医学会等関係が深く、幸か不幸か同級生の中では行き会う機会も多い方です。

 講演の演題は「インプラントを含む一口腔単位の診療計画」ということで、たまたま一週間前の小宮山先生の講演と同じく行き過ぎた「インプラント信仰」、あるいは「どこでもインプラント主義」に警鐘を鳴らすものでした。医科歯科大の保守性によるのか、残念ながら出席した同窓生の中にインプラントをしている先生はわずかだったのですが、「インプラントは歯科医師として今や避けて通れない治療法の一つである。たとえ自分で行わないとしても、その臨床応用を知っておくことは必要である。」ということでの講演でした。

 率直に言って、非常に安心したというか、すんなりと納得のできる話でした。インプラント関係、最新技術と称する話を聞いたり雑誌を読んだりしていると、「本当に出来るのだろうか」とか「特殊な治療だろう」とか考える反面、「遅れてしまうのではないか」とか「自分の臨床はショボイのではないか」とか不安や劣等感、焦りを覚えることもあります。しかしながら彼の講演内容、紹介された臨床は極めて「まっとう」であり、「オーソドックス」であると思いました。この安心感は医科歯科の同窓生の講演を聴いた時のストンと腑に落ちる感じでもありました。学生の時の実習でいつも極めて美しい技工物を作っていた魚島先生の臨床の写真が、商業雑誌や講演で見せられるピカピカの審美歯科写真とは違って実感のある物だったことに妙に感動しました。

 その後懇親会に移行し、魚島先生、群大の根岸先生という同級生をはじめ、部活動繋がりの先生など、とても楽しいひとときを過ごしました。医科歯科大は上下の差別が極めてゆるい事が良くも悪くも特徴です。お互いに人格を尊重する姿勢があるのだと思います。2次会にも参加し、久しぶりの楽しい晩でした。

2011年2月18日 (金)

平成22年度群馬県歯科医学会

 例年のように、今年も1月末の土日すなわち29、30日に群馬県歯科医学会学術大会等が行われました。高崎問屋町のビエント高崎において、私も学会の幹事(=スタッフ)の一人として参加しました。今年は補綴学会も関係なく、自分の学会発表もないためある意味気が楽でしたが、土曜の昼から現地に集合し、会場の用意をして、この日は教育セミナーが5本行われました。
 自分に関係のあるものとしては、横浜市開業の田中五郎先生の「筋圧中立帯を基準とした総義歯製作法」が興味ある講演でしたが、具体的基本的には私たちが教わってきた現在の正統的総義歯臨床と一致するものだと思いました。歯槽頂間線法則を考え直すものとして話されていましたが、まだ世間(歯科界)一般では歯槽頂間線法則による配列が通法なのでしょうか。私の考えでは、どちらの法則に必ずしもとらわれることなく、症例の条件で臨機応変どちらをより当てはめるか考えるべきだと思います。
 最後の土屋和子先生の「バイオフィルムの概念が変えたスケーリングと身体の健康」が本日のメインというか、多くの衛生士さんが参加してくれました。講師はいわゆるカリスマDHのはしりの方なので、多くのファンがいるようでした。
 2日目は一般口演が16題、その後午後3時半から特別講演として小宮山彌太郎先生の「今思う、インプラント治療への警鐘」が行われました。これは同時に補綴学会関越支部会の学術講演会として企画されたものです。小宮山先生は衆知のとおりブローネマルクインプラントを日本に紹介した第一人者でいらっしゃいますが、元々は東京歯科大学の有床義歯で関根先生のもとで助教授をされた方です。私が大学院の時に部分床義歯の論文を読み漁った中でずいぶんお名前を拝見しましたので、自分の中ではそちらの顔のほうが先に意識にありました。以下、内容は関越支部会への報告書に書いた文から。

 近年インプラント治療の急速な普及に伴い、その「影」の面が社会的にもクローズアップされているが、演者はオッセオインテグレーションインプラントを日本に紹介した第一人者である立場からこの状況に警鐘を鳴らしている。親しく交流されているブローネマルク先生の言葉も織り交ぜ、安易な裏付けの乏しい新技術、製品に飛び付くことへの警告、確立されたプロトコールの尊重、滅菌操作等の基本の順守、など治療計画から臨床での細かい点についてまで話された。インプラント治療は欠損補綴に対する強力な治療手段であるが、ひとたび誤ると患者さんと術者、さらには歯科医療界全体に大きなダメージを与えかねないものであることを認識させられた充実した講演であった。

 全プログラムが終わったあとに場所を変えて懇親会があり、小宮山先生もいらっしゃるので是非出たかったのですが、2日間とも吐き気と頭痛で最悪の体調、残念ながら大事をとって帰りました。