総義歯の難しさ
口の中に装着する補綴物のほとんどは、残っている歯に固定源を求めます。固定式の義歯(ブリッジ)ではもちろん、削ってかぶせた固定源となっている歯と一体となります。取り外し式の部分入れ歯では、固定源となる歯にバネをかけて留めるので、ブリッジに比べると義歯の動きはだいぶ大きくなる場合が多いです。それでも正常に機能している状態では、落ちたり外れたりする事はないといえます。
それでは、歯が1本も残っていない場合に作られる「総義歯」ではどうやって義歯を止めているのでしょう。簡単に言うと、気圧と口腔周辺の筋肉の力です。気圧とは、要するに義歯の内面(顎と接する側)に空気が入らないようにして、義歯が吸い付くようにする事です。そのためには義歯のふち(辺縁)の形や長さが非常に重要です。また筋肉とは口唇や頬、舌などの機能する力によって義歯を留まる方向に押し付けたり、さらに前記の「気圧」のために義歯の周りを塞いで空気が入らないようにする事で、義歯の外側の歯肉部分の形が非常に重要です。
想像していただければわかると思いますが、このような不確実な力で義歯を口の中のある程度一定の位置にとどめておくのは非常に難しい事です。ましてや人の口は、ただ飾りとして義歯が入っていればいいのではなく、様々な食物を噛んだり、飲み込んだり、声を出して話したりする時に非常に複雑な運動をしなければなりません。何気なく作ったり使ったりしている義歯ですが、あらためて考えると作る我々もそれを使う患者さんも結構大変なことをしているのだと思います。
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