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2009年7月31日 (金)

ドライマウスセミナー2009

 去る7月12日(日)、ドライマウス研究会主催の「ドライマウスセミナー2009」に行ってきました。この研究会では認定医制度を設けており、一応私も認定医になっているのでその更新の目的もあって参加しました。

 私はこの研究会での講習を含めてドライマウスの勉強をして、その視点からも患者さんを診るようになったことで、非常に臨床の幅が広がりました。しかし日頃思うこととして、ドライマウスの診断、あるいは現在の患者さんの状態がドライマウスによって増悪しているという診断を下すことができても、それを改善することが難しいことが多いようです。保湿剤などの対症療法は簡単に出来ますが、唾液の分泌を妨げている原因すなわち薬剤やストレスの除去、あるいは全身的なことへの介入は、われわれには難しい場合が多いのです。

 そのため、今回のセミナー出席も正直少し気が進まないものがありました。しかしながら実際に出てみると、とても勉強になった一日でした。いつもいろいろな分野からの先生を呼ばれて、ドライマウスに関してさまざまな切り口からの講演が聴けるようになっているのですが、今回は特に興味ある話がありました。眼科の吉野先生によるドライアイの話、さらに経営にも関係したお話がありました。皮膚科の落合先生の口腔アレルギー症候群の話は、まったく知らなかったことで、また現代のアレルギーのメカニズムや起源に関するお話でもあり、非常に興味深いものがありました。精神科の久村先生の歯科心身症に関する話では、座長の斎藤先生や会場から多くの疑問質問が投げかけられ、エキサイティングでした。最後の斎藤一郎先生によるまとめ的な話では、知識の整理と、またもっと積極的にドライマウス患者にアプローチしていく必要性と可能性を考えさせられました。

 この日はその後、約束してあったモリタのショールームに行きました。というのも、ここのところそろそろ、いよいよ、CTの購入を実際問題として考えようと思い始めており、いくつかのメーカーを回ってみようと思っているからです。有明の国際展示場前、ワンザ有明内にあるショールームは遠かったのですが、さすが歯科のトップメーカーだけあり、立派なショールームに結構お客さんがおりました。たっぷり1時間以上、狙っている機種についてお話を伺ってきました。

2009年7月22日 (水)

木下先生ペリオ講演会

 7月9日(木)午後3時、伊勢崎佐波歯科医師会学術講演会があり参加しました。この講演会は衛生士も対象だったので、うちではこの週木曜日、土曜日各半日診療とし、当日は皆でランチをしてから聴きに行きました。
 講師の木下先生は母校の歯周病の教室に残った後、現在は歯学部口腔保健学科の教授をされています。口腔保健学科とは、以前の歯学部付属歯科衛生士学校で、大学の学科となって4年制になっています。私より数年下の学年ですが、私が在学中に習った歯周病の木下教授の息子さんで、新進気鋭の先生です。昨年の秋、東京医科歯科大学歯学部同窓会主催のCDE(卒後の講習会)の歯科衛生士のコースに、うちの衛生士を行かせました。

 演題は「歯科医師と歯科衛生士による、チーム医療としての歯周基本治療」ということで、特にSRP(スケーリング・ルートプレーニング)についてその理論から実技、道具にいたるまで具体的に話されました。歯周基本治療とは、ブラッシング指導、歯石除去、歯面研磨、ルートプレーニング、咬合調整などの非外科的な処置からなり、歯周病のほとんどは基本治療により治癒するといわれています。外科処置や再生療法などの華やかな(?)治療に比べると地味な部分ですが、最も重要な処置群だといえます。この多くを担っているのが、歯科衛生士さんたちです。木下先生の講演は、とっても的確にポイントを押さえたもので、新しいこともありましたが特に基本的な知識の再認識という意味で非常に良かったと思います。事前に集めた質問への答えが織り交ぜられた講演でしたが、歯周治療に関してなんとなくモヤモヤとしている部分をとってもシンプルに、クリアに説明していたと思います。もっとも、わたくし的には例によって母校の先生の話しであるがゆえに、自らの臨床との比較も含めて違和感なくストンと入って気持ちが良かったのかもしれませんが。「現実に日常であんな風に治療できるのか」とおっしゃっていた先生がいましたが、私は「やっている」といえます。また細かい指導を飽きずにやってくれるうちの衛生士と、熱心にブラッシングをしてくれる患者さんに日々感謝、感心しております。

2009年7月 9日 (木)

楽芸会2009

 6月21日日曜日、前橋交響楽団の年中行事の一つである「楽芸会」が行われました。学芸会ではなく、楽芸会です。これは前響メンバーによる室内楽、独奏の発表会で、ほとんど関係者のみの聴衆なのですが、毎年楽しく行われています。今年は県生涯学習センター多目的ホールにて行われました。
 さて、私は毎年この会をターゲットとして、一年に一曲独奏曲を仕上げることを目標にしています。最初は全くのソロや弦と一緒の曲をやっていましたが、7年ほど前から近所でピアノ教室を開いているⅠさんに伴奏をお願いして、独奏曲をやっています。私自身の楽器の「修行」として毎年厳しい曲を自らに課しているのですが、だいたい難しい曲の伴奏は難しいもので、いつもⅠさんには大変なご苦労をかけています。今年はマルティヌーの生誕100年ということで、そのオーボエ協奏曲をやりました。本番のできはともかく、今回はかなりの難度の割には大分完成度が高くできたと思います。

 最近ほとんど出かけていないのですが、私は山も好きで大学の頃はけっこうハードな単独行をしておりました。それで家内に言われたことなのですが、「山は危ないことに挑戦すると大変なことになるが、楽器はいくら難しいことをやっても死ぬことはない。(から挑戦しても良い)」。 確かにもっともなことで、これからも周りの迷惑を顧みず、挑戦していきたいと思っています。ちなみに楽芸会での独奏の記録。’02 パスクッリ/「ファリボータ」による協奏曲、’03 スカルコッタス/コンチェルティーノ、 ’04 ケクラン/14の小品より 第1巻、 ’05 マルタン/小さな嘆き、篠原/オブセッション、 ’06 シューマン/3つのロマンス、 ’07 バッハ(偽作、ピゼンデル)/ヴァイオリンソナタBWV1024、 ’08 ミヨー/ソナチネ、 ’09 マルティヌー/コンチェルト  以上。 

2009年7月 5日 (日)

ソフトティッシュマネジメント講習会

 6月14日の講習会は、インプラントのメーカーであるノーベルバイオケアによるもので、審美やマイクロスコープの世界で名高い鈴木真名先生による講演でし た。ソフトティッシュマネジメントとは、簡単に言うと歯やインプラントの周りの歯肉の取り扱いのことです。
 歯やインプラントは顎の骨にしっかりと植立している ことがまず重要ですが、それに劣らず周辺の歯肉の状態も大切です。口の中の粘膜には頬や舌の下のように引っ張ると動く部分と、歯の周りや口蓋のように骨に しっかりとくっついている部分、すなわち付着歯肉があります。そして歯やインプラントの周りには一定の量のこの付着歯肉があることが望ましいとされています。もちろん天然歯に関しての事のほうが長いこと研究されているのですが、厳密に言うと絶対に無くてはならないものではないが、あったほうが健康が保たれ易い、無い状態では非常に注意深いプラークコントロールが必要である、ということです。そのため、あるグループでは付着歯肉を作る手術が積極的に行われ、またあるグループではプラークコントロールを厳密に行う、という臨床的な違いが見られます。

 もともと必ず手術的な手技を伴うインプラントでは、その際にできるだけこの歯肉を保つ、作ることが重要になります。具体的には、インプラントを植立する部分が歯肉の中だった場合、それを保存してインプラントの周りに残るようにする、そうでない場合はいつかの時点で歯肉や他の組織を移植してこれを作る、ということです。

 インプラントの先生の中には外科系、補綴系、歯周治療系の3系統の先生がいらっしゃるのですが、歯肉の細かいことに関してはやはり歯周治療系の先生が得意とするところです。そして、これまで骨を作るダイナミックな手技についてはずいぶん語られてきましたが、ソフトティッシュの扱いについては比較的最近注目されている部分だと思います。というのも移植や人工材料で苦労して作った骨が、けっこう吸収してしまうものだということがわかってきたこと。またそれを保つために歯肉の厚さや健康が重要であることが言われてきている事があるのだと思います。

 今回の講習は、主に結合組織移植という手術についてのものでした。これは上記のような歯肉を増やすための手術のひとつで、口蓋部等から上皮の下の組織を移植して持ってくるものです。鈴木先生はそれをマイクロスコープを用いた非常に繊細な手術で行っています。模型によるデモや手術ビデオを交えた丁寧なご講演でしたが、ひとつ安心したのは、細かいことをとってもゆっくりやっているということでした。一般的に外科手術においては、外気に触れることによる組織の損傷を少なくするために「速さ」が重要な要素のひとつとされています。しかし細かい仕事はゆっくりでも丁寧さが大事だと強調されており、神業のようなすごい速さで細かいことをやるのでは、と思っていた私としてはホッとした次第です。

2009年7月 3日 (金)

補綴学会2009

 今年も6月6、7日と、日本補綴歯科学会学術大会に行ってきました。今回は大阪大学の主幹で、会場は京都国際会議場でした。金曜の診療が終わってから、新幹線を乗り継いで京都駅まで行きましたが、確か前回名古屋に行ったときなどは金曜夜の東海道新幹線は出張か、単身赴任帰りか、混んでいるなという印象でしたが、今年はガラガラでした。ちなみに帰りもずいぶん空いていたのですが、やはり景気が悪いことと、関西方面の新型インフルエンザ、それに休日高速道路1000円の影響でしょうか。
 さて、毎年まじめに聴くと非常にしんどい補綴学会ですが、今年も新しい企画として「早朝ミニレクチャー」という講演が2日とも設定され、予め申し込めば朝8時から軽食付きで、各3人関西地方の著名開業医の講師の先生から選んで聴講することができました。さすがにあんまり参加者はいないだろうなと思いながら1日目は茂野啓示先生、2日目は中村公雄先生のレクチャーに参加しましたが、いずれもほぼ満席で、参加者の熱心さというか、もしかしたら食べ物目当てかな、などと思いながら驚きました。

 1日目は午前中まずしばらく通常の学会発表があり、それを複数会場はしごしながら聴きました。いつもながら玉石混交というか、思わぬ視点から興味あるものもあればずいぶん詰めが甘い研究もあるのだなと思いました。特に補綴学の扱う対象はたとえばペリオなどと比べて研究を単純化しにくいというか、臨床に即せば即すほど複雑系になってしまい、明快な結果が出にくいのだと思います。見ているとむしろ「科学」であることをかなぐり捨ててしまう方が、新しい一歩を踏み出せるのではないかとも思うのですが。午前の最後に、側方ガイドに関するミニシンポジウムがありました。

 昼はランチョンセミナーでまたただ飯を食い、午後は海外特別講演、シンポジウム、臨床スキルアップセミナーと夜7時まで続きます。海外特別講演はアメリカの顎機能異常の権威として有名なオケソン先生のレクチャーですが、何と通訳なしで途中で着いていけなくなり、わかったようなわからないような。今や研究者としてはこの程度の語学は当然なのでしょうか。またシンポジウムはブラキシズムへのチャレンジということでしたが、これが今回の学会でもっともエキサイティングなものでした。

 夜終わったときはフラフラでしたが、誰か知ってる先生がいたら一緒に食事へ、などと思っていたのですが、今年も結局会えずじまい。一人寂しく京都の町に向かい、予め調べてあったレコード店に行ってみました。河原町の場末のさびれたレコード店で、その近くの食堂で夕食をとり、しばらく背表紙が光焼けしたCDを眺めました。一応2枚ほど購入し、バスで宿に向かいましたが、そこからしばらく行った盛り場のにぎやか華やかなこと、大失敗だと後悔しながら宿に向かい、寝ました。

 2日目も早朝からセミナー、診療ガイドライン作成部会報告「ガイドラインを臨床に生かす」、医療委員会報告「歯周病と補綴歯科治療」、理事長講演、ミニシンポジウム2「無歯顎症例に対するインプラント・・」、ランチョンセミナー、特別講演「食べるということ」、と講演の連続。意識があったり意識をなくしたりの繰り返しで、年々残るものが断片的になってしまいます。この中でガイドラインに関して、地味で歯科全体にはあまり知られていない活動ですが、補綴専門医が拠って立つところというか、補綴学会が社会に発信する根拠というかになる大事なものだと思います。

 これらすべての学術大会プログラムの後、別立てで「専門医研修会」がありました。補綴専門医の認定あるいは更新のための研修ですが、今回「この症例にこの補綴処置」という演題で、すれ違い、下顎総義歯の吸着、上顎シングルデンチャー、有床義歯のインプラント、という4つを取り上げ、4人の先生が話されました。特に2、3番目にそれぞれ総義歯で有名な阿部二郎、鈴木哲也両先生が話され、何か対決があるかと期待しましたが、そうでもなかったです。ようやく午後5時にすべてのプログラムが終了しました。

 さて今回も母校の先生や同級生に会えるのが楽しみだったのですが、今年はなかなか見つかりませんでした。それでも昨年医科歯科の総義歯の教授になった水口先生、私の2年上で大学のオーケストラでも一緒だったのですが、先生としばらくお話しできたのは一番の収穫でした。また教室の1年上の秀島先生とも会えました。顔を見かけたものの忙しそうで通り過ぎてしまった先生や来ているはずなのに発見できなかった先生もいて残念でした。

 残念といえば、今回は漠然と購入を考えているCTの企業展示を期待していたのですが、不景気を反映してか展示のしょぼかったこと。CTどころか大きな機械はぜんぜん来ていない感じで、非常に寂しいものでした。

 今回は会場が京都ということで、少しくらいは途中で抜け出してお庭でも見てこようと思っていたのですが、そこまでの元気も無く観光地は横目で見ながら素通りで残念でした。約20年か、非常にしばらくぶりの京都でしたが、駅をはじめとしてずいぶん華やかになった感じでした。また最寄り駅から3時間余りで行けるということを改めて確認し、今度は遊びに来ようと固く誓ったのでした。