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2009年11月30日 (月)

歯科医院におけるコミュニケーション研修会

 去る11月19日木曜日、伊勢崎佐波歯科医師会医療管理委員会主催のスタッフ、ドクター対象の研修会が行われました。というよりも、私がコーディネータであり主催の委員会の委員長なので、行いました。千葉県立保健医療大学教授で歯科衛生士の吉田直美先生をお呼び し、「あなたがいるから医院が楽しい ―歯科医院を活性化させるグッド・コミュニケーション―」という演題で3時間、講演、実習等をしてもらいました。

 講師の吉田先生は今年の4月に、歯科衛生士で初めて大学の教授に就任されました(同時にもう一人就任されたそうです)。彼女は私が医科歯科大学卒業後、顎口腔機能治療部という顎補綴の診療室に残ったのですが、そこに所属していた衛生士さんです。同い年ということもあり年賀状程度の付き合いがありましたが、ついに偉くなって しまったということで早速講演をお願いし、快く引き受けていただけました。

 当日は3時からの講演でしたが、朝からフリーということで少し早めに来て頂き、午前中診療を終えた当院Dsc_0120のスタッフらと昼食会を開きました。伊勢崎のフレンチ、ミモレットです。ひとつは講演事前のこの地方の衛生士事情の事情聴取(?)、そしてうちのスタッフのモチベーションアップのためです。

 3時からの研修会は伊勢崎市民プラザの会議室でしたが、60名あまりの参加者で会場はいっぱいでした。お話の内容はまず日本の歯科衛生士の歴史や業務範囲の広がり、これからの展望等の概説を話していただきました。来年度ですべての衛生士学校が3年制以上となり、また現在数校の4年制大学が誕生しているということで、歯科衛生士の業務もこれまでの「技術ベース」から「知識ベース」、自律性を問題とする専門職モデルに変わっていくべきということでした。

 このように3年制に変わった歯科衛生士過程おいて強調されている教育が、問題解決能力や「コミュニケーションスキル」です。これからの(歯科)医療では患者さんのニーズと医療者側の問題意識を共有するため、患者さんから「聴かせてもらい」、患者さんに「気付いてもらう」、いずれもコミュニケーションがその決め手となります。歯科衛生士をはじめとしたスタッフは、「患者さんの気持ち、感情を受け止め、患者さんの期待を知る。加えて歯科衛生士は、行動変容をさせちゃう人。」であり、ニーズ発見のキーパーソンです。このような重要な意味を持つコミュニケーションスキルについて、カウンセリングの手法等にも言及し、また演習を交えながら講演していただきました。大学での教育課程では何十時間もかかる事をギュッと3時間でお話いただいた訳で、ほんの触りといえるかもしれませんが、とってもわかりやすくまたその重要性が皆さんに認Dsc_0125識されたことが最も大きな成果だったと思います。

 講演終了後には医療管理委員との懇親会にも付き合っていただきました。私個人にとっては何より、かつての「戦友」(?)との再会みたいなものであり、20年弱のギャップを忘れて楽しい時を過ごさせていただきました。

 

2009年11月28日 (土)

サイナスリフト・シンポジウム

 去る11月15日(日)、東京旗の台の昭和大学の講堂で行われた「サイナスリフトシンポジウム、~サイナスリフトを斬る~」に参加してきました。主催はUCLAインプラントアソシエーションジャパンで、以前参加した医科歯科同窓会主催のサイナスリフトの講演と実習のコースの講師、菅井敏郎先生らが立ち上げている団体です。
 5人の異なる立場の講師による講演とディスカッションからなり、インプラントの手技として欠かせないものとなっている、しかし最近その方法に様々な見直しの行われている、サイナスリフトについて、問題提起や解説が行われました。5人の講師とは、臨床医として菅井敏郎先生、解剖学の立場から東京歯科の阿部伸一教授、病理や臨床検査の立場から同じく井上孝教授、耳鼻科医の立場から石戸谷淳一先生、再生医学の立場から医科歯科の春日井昇平先生、です。
 これまで3例の手術を行っている経験者but初心者の私としては、解剖学的な注意点、耳鼻科的な知識、移植材や手術法などのトレンド、そもそもサイナスリフトの必要性、など非常にタイムリーに役立つ講演であり、めずらしくほとんど寝ないで聴く事ができました。
 ここ何年かのインプラントの世界は非常に進歩というか変化が激しく、また勢いのある分野なので潮流がどっと極端に触れていく、よく言えば日進月歩、悪く言えば朝令暮改という感じです。つい何年か前は上部構造主導のインプラント治療のために骨移植、骨増生がいつも必要みたいな事が叫ばれていたのが、あっという間にグラフトレス、フラップレスの流れに変わっている、そしてその方向でなければダメようなことを言う先生もいる。ケースにより最適な治療法は違うはずなのですが、どうも勢いで極端に振れる傾向があるようです。
 以前に書いた様に形よりも出来るだけ低侵襲の良い場合と手術が大変でも移植をなど行わなった方が良い場合と、患者さんの要求、条件、部位等様々に変化するわけで、それを適正に決めて施術するのが臨床医の役割です。その前提として様々な手技を行える幅広い能力を持つことが必要だと思っています。

2009年11月23日 (月)

藤澤政紀先生講演会

 去る2009年11月12日、午後2時より平成21年度伊勢崎佐波歯科医師会学術研修会として、明海大学歯学部補綴の藤澤政紀教授の講演がありました。演題は「補綴装置に手を付ける前に考えたいこと」。
 藤澤先生は今年の6月に群馬県歯科医学会でも公開講座でお話がありました。その時とほぼ重なる御講演で、補綴医としての立場からおもに咬合をいじる時の危険性、心身医学的問題のある患者さんへの基本的なスタンス、などを話されました。今回は顎関節症の患者さんに関する話を詳しくされたようでした。
 ちょうどドライマウス研究会と、歯科医師会での精神科の先生による歯科心身症のお話をはさんで、藤澤教授の講演を聴いた訳です。補綴治療を行う場合には可逆的な方法をとり、「患者の訴えを解消する上での不安を軽減していく、いわば簡易精神療法を踏まえた可逆的アプローチです。このアプローチは、治療方法であると同時に診断を下す上での根拠を提示するという点では、検査も兼ね備えているといえます。」という考え方は非常に共感できるもので、また日常試行錯誤的に行っている方法を意識させてくれるお話でした。
 日頃考えるに、雑誌等で華々しく紹介される咬合を再構成してしまうようなケースは、はたして問題なく経過しているのでしょうか。某先生のおっしゃられていた「インレーひとつ外れても、局所の問題と考えてはいけない。すぐに再装着するのではなく、咬合の問題を掘り出して、全顎の治療にもっていく。それがコンサルテーションである」というようなアプローチは、われわれを経済的に幸福にするかもしれませんが、果たして不幸にしてしまっている患者さんはいないでしょうか。

2009年11月22日 (日)

当院のインプラント治療の現状 その3

 このようなインプラント臨床の経験の蓄積、さまざまな講習や勉強、さらには卒後四半世紀弱の歯科臨床経験から、現在の私のインプラントの臨床的な基準です。

〇まずできうる限り患者さんの天然歯を残すことを尊重します。そのためには歯周治療や歯内治療等の可能性を探ります。

〇また天然歯を抜歯とするか保存するかは、予防に対する患者さんの意欲や経済的、社会的な条件も重要な要素となります。

〇これらの診断の下、に残せる歯と抜歯となる歯をきちんと選別し、その上でインプラントを含めた総合的な治療計画を立てます。

〇残存歯を含んだ治療計画には、必ず残存歯の歯周病治療、予防のプログラムを含みます。

〇インプラントの治療計画には、安心安全な手術のため、CT撮影を必ず行います。

これらの準備の上で作った治療計画は、

〇臼歯部のインプラントでは、できるだけ「グラフトレス」の道を探ります。すなわち骨移植などの付帯手術なしにできる方法を、ショートインプラント、傾斜埋入、歯肉形態の補綴物による再現、などにより探ります。

〇前歯部のインプラントでは、審美的な要求にこたえるため、必要に応じて骨増生やGBR、歯肉移植などの手術を行います。

〇インプラントの数は、患者さんの手術侵襲と経済的負担の軽減のため、可能な限り少ない本数で済ませるようにします。すなわち、

〇1本欠損、2本欠損ではもちろん1本、2本のインプラントが必要です。

〇3本欠損以上は、できるだけブリッジの道を探ります。

〇全歯欠損→4本から8本 基本的にはオールオン4。

 もちろん患者さんの顎骨や咬みあわせの条件、治療に対するご希望等は個人個人で全く異なります。したがって個別に、患者さんと話し合った上で計画を立て、治療計画書を作製して説明し、承諾の下に治療を開始するようにします。

2009年11月 4日 (水)

CT導入速報

 さる11月1日、待ちに待ったCT(兼デジタルパノラマ)撮影装置が入りました。ここ何年間か、当院のスペース等の条件、仕様・性能、メーカーの対応等さまざまな要素を研究した結果、朝日レントゲン工業製の「AUGE(オージェ)」を入れることを決めました。そして過日、設
置作業が行われました。

 当日は9時かDsc_0108ら、これまでのパノラマレントゲン装置の撤去、新しい装置の設置、電源やデータのケーブルの調整、パソコンの設置と解析、画像管理ソフトのインストール、等々で夜8時過ぎまで、びっしりと作業が行われ、私も見学と手伝いをかねてみていました。何とDsc_0112か無事に試運転完了。





 

 次ぐ日2日には、午前中はうろ覚えの私による慣らし運転、午後から診療時間中に業者さんによるスタッフへの説明と補助、さらに最後の1時間を空けておいたので、私も含めてさらに操作法等の説明と実習を行ってもらいました。最終的にやはり8時過ぎまで、朝日のYさん、本当にご苦労様でした。Dsc_0110
 特に画像の解析と管理のソフトが盛りだくさんなため、完全な使いこなしにはちょっと時間がかかると思いますが、同時に交換したIP(イメージングプレート)によるデンタルX線とパノラマの画質も向上し、CTとともに診断のための強力なツールになると思います。またインプラントをはじめとして安心安全な手術のために活用したいと思います。