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2008年10月26日 (日)

9、10月の研修など その3

 もうひとつ、10月23日の木曜日の晩、伊勢崎市内のホテルクレインパークで、東京医科歯科大学教授、須田英明先生の講演がありました。中毛学術講演会という行事であり、今回は伊勢崎佐波歯科医師会の主催で行なわれたものです。
 須田先生は歯内療法の教室の先生で、現在東京医科歯科大学の副学長、理事も勤められている重鎮です。実は伊勢崎市のご出身で、ご実家でお兄さまが市内で歯科医院をされており、私もお世話になっています。卒業後顎補綴の部屋に残った時も、同じフロアで隣が歯内療法の部屋でした。

 さて今回も歯内療法に関する講演でしたが、澤田先生の時と同じように「見える」ことで治療のクオリティが飛躍的に上がるということが強調されていました。すなわちマイクロスコープ(実体顕微鏡)です。現在の臨床の流れにマイクロスコープを組み込むことは、はっきり言って非常に困難です。しかし今回の講演では「困った時のマイクロスコープ」ということ、すなわち常時ではなくも、どうしても必要な時や不安な時に使う、ということが言われていました。しばらくそれを目標に、現在の当院の歯内治療の流れを改革して行きたいと思っています。

9、10月の研修など その2

 さて続いて、10月12-13日に同じく母校同窓会の主催臨床セミナー、「オバマに聞こう、前歯部審美修復のすべて」を受講してきました。「オバマ」とは福島県開業、SJCDの小濱忠一先生のことです。小濱先生のお話はこれまでもインプラントのメーカーの講演等で聴きましたが、お一人で2日間も話されるのは珍しいということでした。

 もちろんこれまでも承知していたことですが、先生の症例は非常に素晴らしい、美しいもので、そのスライドを見るだけでも十分価値のあるもでした。というよりも、それが最も価値のあるものだと思います。細かいテクニックやノウハウの数々も説明され、それももちろん非常に有用なものでしたが、なんと言っても補綴においては実際の仕上がりを見ることがとても大切なものだと思います。やればここまで出来るのか、目標とするものはどんな物なのかを、しっかりと頭に焼き付けることが重要なことのひとつです。講演の中で先生は、「あちこち少しずつかじるのではなく、この人と思ったボスに徹底的に付いた方が良い」とおっしゃっていました。私は必ずしもその考えに組みする者ではなく、独立した個人であり研究者でもあるべき一医師として、徒弟関係のようなものに組み込まれるのはどうかと思います。それでも、自分の卒直後の事を考えると、大山教授治療のアシスタントとして過ごした1年間で見た、接した診療の素晴らしさ、出来上がりの美しさが、自分の臨床の目標、標準になってきました。

 さて、お話ではそれにしてももはやオールセラミックスの時代、と言えそうです。金属を用いたいわゆるメタルボンドか、金属を用いないオールセラミックスかということは先生によって意見が分かれるところ、メタルボンドで十分に美しく出来るのだから、強度など、より信頼性があり実績も長いメタルボンドでよいのでは、という意見があります。しかし今回強調されていたのは、オールセラミックスの方がより容易に美しく出来る、ということです。光が透過するオールセラミックスのほうが、当然天然歯に近い性質を持っており、それに近く作ることが出来ます。信頼性に関しても、ここ何年かでずいぶん出揃ってきたようです。それに金属の価格が急騰してきたのも、オールセラミックスに追い風のようです。なかなか自費の仕事はないのですが、私もできるだけ取り入れて生きたいと思っています。

2008年10月24日 (金)

9、10月の研修など その1

 ずいぶんご無沙汰してしまいました。夏から秋に変わる時期、夏バテの身体で本業の忙しさに加え、2回の泊まりの研修、オーケストラの演奏会、畑の模様替えといろいろ重なる大変な時期で、なかなかブログを書く余裕もありませんでした。

 さて、9月14-15の連休は東京医科歯科大学同窓会の臨床セミナー、「Ultimate Endodontics 本には書かなかった私のテクニック」に行ってきました。同窓の歯内療法の教室出身で現在東京で「歯内療法専門医」として開業されている澤田、吉川両先生による講演です。歯内療法とはいわゆる「歯の神経」の治療です。虫歯が進んで神経を取る、あるいはそれがうまくなおらなくて膿がたまった歯を治す、治療です。澤田先生の講演は4年位前にも一度受講し、大変勉強になりました。

 歯内療法は私達にとって本当に日常茶飯の治療ですが、私たち開業医のレベルでは予後が必ずしも良好とは言いがたい状態です。また多くの場合何十年も前と同じあるいはそれ以前のレベルの診療がされている場合が多いのが実態のようです。しかしながら先端のレベルではこの10年くらいでパラダイムシフトとも言われる変革があった分野です。それを実際に体現している専門医の先生の臨床を学ぼうという目的の講演です。
 細かいことはいろいろありましたが、今回最も強調されまた私も感じたことは、とにかく細菌感染性の物質を根管(歯の神経が入っていた、歯根の中の空洞)や根尖(歯根の先)から除去することが治療の目的であるということを、当然のことであるにもかかわらず強力に再認識すべきだということです。そしてこれを達成するために、歯科用顕微鏡によるエンドやマイクロサージェリーがあるということです。ですからそれ以前に、まずラバーダムという基本的な手技が必要だということがあらためて強調されました。

 私たち開業医の実際の臨床で、学生の時に習ったことで何が行なわれていないといったらラバーダムが一番に上げられると思います。忙しい臨床の中でとっても面倒くさいことですが、とにかくまずラバーダムをルーティンにすることから始めようと決心した次第です。これを十分に診療に定着させてから、顕微鏡を取り入れようと思っています。

 というわけでこのセミナーの後から、まずはこれまで不十分だったらバーダムの道具をそろえ、ボチボチ歯を選んでラバーダムを始めています。しばらくぶりにラバーを使ってみると、治療に「集中」できることが大変大きなメリットであると感じました。だんだんこの実施率を100パーセントに近づけて行きたいと思っています。