2010年6月 6日 (日)

ブラキシズム最前線

 先週に引き続き日曜日にお勉強。5月30日(日)は、東京医科歯科大学歯科同窓会CDE講演会、「ブラキシズム最前線!!-歯科治療のパラダイムシフト~力との闘い-」に行ってきました。通常この講演会は医科歯科の学内の講堂で行うのですが、今回は受講生が多数(約400名ということです)だったため会場変更となり、飯田橋駅最寄ののベルサール飯田橋ファーストというホールでした。

 ブラキシズムとは簡単に言うと「歯ぎしり」です。歯を失う主な原因はもちろん虫歯と歯周病ですが、この二つは細菌が直接の原因であることがわかっており、先進的な話としてはもはやコントロール可能ということになっています。しかしいくらこの2つを制御しても、「力」のが原因の歯の問題は起こってきます。近年虫歯と歯周病をきちんと制御出来る患者さんが多くなったわけで、にもかかわらずブラキシズムなど過大な力がかかることで破折や摩耗によって歯をダメにしてしまうことが目立ってきたというわけです。

 講師は昭和大学の補綴の馬場一美教授と、大阪大学高次脳口腔機能学講座講師の加藤隆史講師、一緒に仕事をしていらっしゃるようですが、臨床と基礎の先生方でした。馬場先生は医科歯科大学で一年下の後輩で、第一補綴(部分床義歯)に残っていてしばらく前に昭和大学に教授として出た方です。補綴学会でもブラキシズムのシンポジウムなどで、お話を聴いたことがありました。

 究極のこの日の結論から言うと、「ブラキシズムは止められない」ということでした。なかには歯ぎしりを止めることを売りにしている先生方もいらっしゃるのですが、エビデンスとしてはないということでした。率直に言うと講演の演題等から、なにか画期的な療法が示唆されるのではないかと少し期待もしていた私としては、少し外されたところがありました。また馬場先生のお話は基本的に補綴学会とうでも聴いていたので、全て新鮮というわけでもありませんでした。しかし睡眠科学やブラキシズムの病態など、基本的なことをまとめて理解できる良い機会でした。また主催者側が驚いたほど参加希望者が多かった(伊勢崎の私の知り合いの先生は、数週間前に問い合わせたら満席で断られたということでした)こと、講演終了後の質疑応答の盛り上がりからも、ブラキシズムの問題に悩んでいる先生がたくさんいることがわかりました。それは、ひとつにはこれまで虫歯や歯周病など他の問題にマスキングされていたものが近年気づかれてきたということ、そしてもしかしたらストレスフルな現代社会でブラキシズムの発症が多くなっているのか、とも思います。いずれにしても歯科疾患のひとつの見方として常に頭に入れておかなければならない事だと思います。

2010年6月 3日 (木)

高崎でのノーベル・ソリューション・セミナー

 去る5月23日(日)、ノーベルバイオケアの主催で、高崎市のビューホテルにおいて、中村社綱先生による「ソリューション・セミナー」があり、参加してきました。中村先生は最近のインプラント界においては超ビッグネームであり、高崎に呼んでくれたノーベルバイオケア群馬県担当の営業、Oさんはよくやってくれたと思います。ソリューションとは最近歯科でもよく使われるはやりの言葉で、要するに治療方法の選択ということでしょう。
 メーカーによるセミナーなので、当然のことながらノーベルバイオケアの製品を用いたインプラントの話なのですが、自分のところで使っているから贔屓目になることを減じたとしても、やはりブローネマルクを有し他とは比較にならない実績のあるメーカーなので、今日のインプラント治療の最前線の講演でありました。
 中村先生は私が言うまでもないのですが、数々の公演を聴き、症例を見る限り、とにかくまず上手です。また講演も豊富な経験と知識に裏付けされた自信に満ちたもので、お話ぶりから推測される人柄のよさも手伝っていつお聴きしても力づけられるものです。今回特に大きなトピックはなかったのですが、自分のインプラント臨床の基本的な考え方、方向は中村先生のお話と同じ方向であり、それは間違っていないであろうことが確認されたと思います。
 私がインプラントを始めてからの短い期間にも、はやりというか潮流は大きく変化してきました。たとえば最初の頃は、CTなど撮らなければできないのは素人だ、みたいな言い方をする先生もおり、伊勢崎市民病院にCT撮影を依頼したのもどうやら私が初めてだったみたいなのですが、今ではうちにもCTを入れる時代です。基本的にいろいろな方向が出尽くした感のある現在、ソリューションの原則を確認しておくことは意味があることだと思いました。
 すなわち可能な限りグラフトレス、すなわち低侵襲で補綴的な工夫で機能させる。ただし、前歯など審美的に必要な場合は骨や軟組織の増成手術を厭わない。インプラント本数は可及的に少なく。などです。ただしある種の即時荷重とフラップレスは、まだ私は自信がありません。
 地元なので会場にはよく知った顔がずいぶんあり、仲良しの先生と話が弾みました。また高崎の中心部で、市営の高松地下駐車場から少し歩いたのですが、やはり伊勢崎とは全然違った少し都会の匂いがしました。(必然的に高崎の先生方は都会的な対応を迫られるわけで、ある意味大変なのだろうなと思いました。)

2010年3月25日 (木)

リサは里帰り中

 現在、うちのリサは里帰り中。「リサ」とはオートクレーブの名前です。当院の感染予防の中核をなすこの器械は、「クラスBオートクレーブ」といわれる優れものです。オートクレーブとは簡単に言うと圧力釜みたいなもので、密閉された圧力容器の中で加熱によって蒸気を発生させ、2~3気圧の高圧の蒸気によって細菌とその芽胞など、すべての微生物を殺滅するもので、医療機関におDsc_0118ける感染防止の基本となるものです。通常のオートクレーブはタンク内で水を沸かして空気を追い出し自然に蒸気を満たすものですが、クラスBでは真空ポンプとスチームジェネレータを内蔵し、強制排気と蒸気注入を繰り返して中身の隅々まで蒸気を浸透させるものです。これによって細い中空のパイプの中身やリネン類の内部、滅菌パックなどで包まれた被滅菌物の隅々にまで蒸気が行き届き、確実な滅菌が出来ます。

 当院ではインプラントを始めたことをきっかけとして感染予防レベルをより確実に上げるために、4年ほど前にこの器械を入れました。このような性質のものなので、4000サイクルで大規模なオーバーホールを行うことが推奨されています。そのため今回、日本での取り扱いメーカーである白水貿易に里帰りとなったわけです。いま当院に鎮座して働いているのは代替品である会社のデモ品です。ちなみにもちろんタダではなく、十数万円の費用がかかり、また購入時にも通常のオートクレーブの3倍くらいの価格でありました。感染対策には非常にコストが掛かりますが、頑張って安心安全な診療のための投資をしています。

 歯科医院の感染対策は、患者さんの非常に関心のあるところだと思います。これから折にふれて当院のシステム等についてご紹介していきたいと思います。

2010年3月 1日 (月)

2010年2月の報告

 2月はバタバタして(いつもそうですが)、書き込みをサボってしまいました。以下ミーティング資料から、2月の報告とさせて頂きます。

1月30,31日(土、日) 群馬県歯科医学会学術大会・群馬デンタルショー
         併催 日本補綴歯科学会関越支部学術大会 @高崎市問屋町 ビエント高崎
    学会発表(補綴学会) 「下顎とその周囲組織の欠損に対する顎補綴の3例」
    補綴学会特別講演 「歯科金属アレルギー治療は、簡単か?むずかしいか?」
            大阪市開業 高 永和 先生
    群馬県歯科医学会教育セミナー 「群馬大学口腔外科における上顎片側切除後の
                             顎義歯を基本とした組織移植基準」
            群馬大学医学部口腔外科 教授 横尾 聡 先生
    群馬県歯科医学会特別講演 「歯科心身症患者さんにどう対処するか?」
                             ~インプラントと歯科心身症~
            東京医科歯科大学大学院歯科心身医学分野 教授 豊福 明 先生 

2月6日(土) 東京医科歯科大学歯科群馬県同窓会 学術講演会
                       「見逃してはならない口腔疾患」
            群馬県立がんセンター 歯科口腔外科部長 山根 正之 先生
2月18日(木) 平成21年度医療連携研修会
                 「地域医療計画における群馬県の脳卒中急性期医療の現状」
            脳血管研究所美原記念病院院長 美原 盤 先生
2月21日(日) 平成21年度群馬県歯科医師会学術講演会・シンポジウム
                 「日常臨床における顎機能検査の有効性について」
            日本歯科大学新潟短期大学教授 浅沼 直樹 先生
            日本歯科大学新潟生命歯学部歯科補綴学 教授 小出 馨 先生

2010年2月12日 (金)

平成21年度群馬県歯科医学会1日目(補綴学会関越支部会)

 去る1月30,31日と、高崎問屋町センター(ヴィエント高崎)に於いて群馬県歯科医学会が行われました。今年度から学会の幹事(伊勢崎佐波歯科医師会など各支部にひとりずついる役員)になったため、あまり役に立たなかったと思いますが一応スタッフ側として参加しました。
 また今年は日本補綴歯科学会関越支部会も併催、すなわち土曜の昼過ぎまではそちらの演題と講演だったのですが、こちらも一応群馬県の理事になっているので、スタッフ側として参加でした。とは言っても前記事で述べたように発表もしたので、いろんな立場がごっちゃになっていた感じです。
 朝から会場準備を手伝った後、補綴学会に参加。同級生の魚島教授が大会長でその挨拶から始まり、主に大学の人たちの演題が続きました。私の演題は11時半からでしたが、やはり若干緊張したものの無事終えることが出来ました。座長の宮下先生(高崎市開業、群馬県歯科医学会)有難うございました。

 ところで、高名な方で公人と言っても良いと思うので名前を出してしまいますが、あのインプラントの小宮山先生が会場にいらっしゃいました。発表を聴いている時にふと会場内を振り向くと、見たことがあるような顔が、あれは小宮山先生だということで驚いてしまいました。前述の宮下先生を含め、東京歯科大で同じ教室(第1補綴)だった先生が学会にいたのでびっくりして休憩中にフォローしていましたが、聞いたところではインプラント関係の演題を聴きに、一人でわざわざいらっしゃったようです。あれほどの高名な第一人者の先生にも係わらず、こんな小さな地方会に一般の演題を聴きにいらっしゃるという、本当に尊敬できる方だとつくづく思いました。私の演題まで残っていらっしゃらなかったのがちょっと残念でしたが。

 さて、昼休み中は関越支部の理事会、午後は特別講演(金属アレルギーの話)があり、終了後場所を変えて懇親会となりました。このとき会場では群馬県歯科医学会の演題に変わり、よるまで発表がありました。私は立場上懇親会に参加しました。大会長が魚島先生、実行委員長が富塚先生と同窓の知り合いであり、話題には事欠かず楽しいひとときでした。また新潟大学の教室の方たちも、気持ちの良いかつ優秀な方たちばかりで、有難うございました。

2010年2月 5日 (金)

学会発表2010

 この1月30日(土)、久しぶりに学会発表を行ないました。日本補綴歯科学会(補綴学会)関越支部会において、今年は群馬県で行われ、会場は高崎の問屋町センター、ヴィエント高崎でした。
 学会認定のImg補綴専門医の更新の条件の一つとして約5年に1回、学会発表や論文の投稿を行わなければならず、それが主な目的です。とは言っても、大学に残っている人はそれが仕事であるし、開業医でも共同演者として名前を載せている人も多いようですが、単独で準備、発表する作業とプレッシャーは結構大変です。しかしせめて5年に1度くらい、自分の臨床を振り返ったりまとめる意味や、真似事でも学術的な事に触れる意味、等々自らに課す試練として敢えて行ってきました。
 本来は期限までには来年度でもよいのですが、群馬県が会場だということと、何よりも大会長が医科歯科の同期生の魚島勝美教授だということで、今年やらせてもらいました。
 魚島先生とは名簿の順も近く、同じクラスの中でも良く知っている方でしたが、彼は本当に手が早く美しく、実習の作品等の出来は素晴らしいもので、逆の私はいつも笑われて馬鹿にされておりました。そんな彼とこのような場所でいっしょになるというのは本当に不思議な感じがします。 補綴学会の関越支部会は新潟、群馬、栃木の3県から成っているのですが、開業医中心の学会ではないため、当然のことながら大学2校を有する新潟の人ばかりの参加、発表になっています。そんな中で今年は群馬だし、群馬県歯科医学会との併催だし、景気づけにも(?)これは演題を出さない手はない、と一人で勝手に意気に感じ、発表することにしました。Dsc_0116_2

 演題は「下顎とその周囲組織の欠損に対する顎補綴の3例」。最近たまたま非常に難しく、かつ全く異なった状態の下顎欠損の患者さんが重なりました。上下無歯顎で下顎が半分しかなく、それが「ブラブラ」な状態の方、歯があるものの切除して半分残った下顎が偏位して噛み合わなくなってしまった方、さらに舌や咽頭を全摘して口腔の機能をほとんど失ってしまった方。それぞれとても考えさせられる症例で、是非その経験を共有して欲しいとの思いからの演題です。

 12月頃から準備をはじめ、写真を集めたりカルテを見直したりしたのですが、如何に普段必要なときに写真をとったり資料をとったりしていないかということがわかりました。今後の反省点です。いざ原稿とスライド(パワーポント)を作り始めると、あれも見せたい、これも言いたいという感じで、短くするのが大変でした。それでも予演でも本番でも早口で何とか時間に詰め込むという感じでした。

 大学の教室からの他の演題と異なり、症例報告で大したノイエスもないのですが、逆に中では新鮮というか色合いが違ってよかったのではないかと自分勝手に思っています。質問して下さった方もおり、良かったと思っています。今更この年でドキドキということもないのですが、やはり適度の緊張感は後になってみれば快感でした。

 補綴学会全体と群馬県歯科医学会全体、それに懇親会等については別立てで報告します。

 

2010年1月 2日 (土)

2010年頭のご挨拶

年頭のご挨拶 ~今年の年賀状から

謹賀新年。

 約100日経過した政権交代。期待と不安、高揚感と失望と、様々な評価が入り交じっていますが、とにかくこれまでの政治と行政システムのいい加減さ、それを問題提起することのあまりに少なかった大手マスコミの怠慢さ、等が明らかにされつつあることだけでも歓迎すべきことだと思います。しばらく混乱が続くことでしょうが、もはや長年にわたり打たれ強くなっている我々の業界にとっては、変化は歓迎怖いもの無しではないでしょうか。(中略)

 もともと好きではありましたが、娘が美大受験を決めてからそれを口実に美術館を巡っています。いろいろな地方の町や村にも特色を持った美術館や博物館があるものです。GWに寄った入善の発電所美術館、夏に訪れた中央構造線博物館、アンフォルメル美術館、駒ヶ根美術館など印象的なものでした。またほんのリハビリ程度ですが山歩きも復活、尾瀬や御岳八合目などに行ってきました。脚は散々痛くなりましたが、やはり山は素晴らしい。

 オーボエ関係。前響ではベートーヴェンの8番やペール・ギュント組曲を吹きましたが、寄る年波による集中力の減退を感じています。また楽芸会ではピアニストの協力で没後50年のマルティヌーのコンチェルトをなんとか吹ききることができました。名曲でした。

 医院では、厳しい経営環境の中でなんとか衛生士3人体制で頑張ってもらい、ペリオをベースとした補綴専門医としての臨床に取り組んできました。また医院の規模に比して過剰な設備かと悩みましたが、ついにコーンビームCT(朝日レントゲンAuge)を入れました。インプラントの診断をはじめ、大いに活用しています。それでは本年もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。            

 

2009年12月23日 (水)

経営セミナー

 昨日、東京国際フォーラムに、歯科経営コンサルタント会社のシー・エイチ・アイによる歯科医院経営セミナーに行ってきました。副題は「自費売上1000万円アップ」というエグイものでしたが、内容は極めてまっとうな、真面目なものでした。
 経営に関する話ではいつものことながら、まず歯科業界のおかれている危機的な状況が説明されました。しかしながら漠然とした危機感はあるもののなかなかそこから経営改善の実践に至らないという実態があるということです。そして普通の営業マン、優秀な営業マン、悪徳商法の比較から、まず「患者さんからの信頼を得ること」が重要であることが最後までテーマだったように思います。

 細かい方法、ノウハウはいろいろあるものの、結局この「信頼」ということは経営に限らず、医療人としての王道であると思います。かなり以前に医療管理学会の講演で、経営や収入のことを語ることが医療人としては恥ずかしいことであるという、何となく後ろめたさがある先生も多いが、その経営の改善によってできる余裕を患者さんへの説明や、患者さんと話す時間に使ってくれ、というお話を聴いで感銘を受けたことがありました。また高度な医療機器や材料、技術が日々変化する現在では、そもそもある程度の収入がなければ医療の向上にかける余裕がなくなり、患者さんの不利益にもなります。私達開業医にとっては、経営と医学を高いレベルでバランスを取ることが非常に重要だと思います。

2009年11月28日 (土)

サイナスリフト・シンポジウム

 去る11月15日(日)、東京旗の台の昭和大学の講堂で行われた「サイナスリフトシンポジウム、~サイナスリフトを斬る~」に参加してきました。主催はUCLAインプラントアソシエーションジャパンで、以前参加した医科歯科同窓会主催のサイナスリフトの講演と実習のコースの講師、菅井敏郎先生らが立ち上げている団体です。
 5人の異なる立場の講師による講演とディスカッションからなり、インプラントの手技として欠かせないものとなっている、しかし最近その方法に様々な見直しの行われている、サイナスリフトについて、問題提起や解説が行われました。5人の講師とは、臨床医として菅井敏郎先生、解剖学の立場から東京歯科の阿部伸一教授、病理や臨床検査の立場から同じく井上孝教授、耳鼻科医の立場から石戸谷淳一先生、再生医学の立場から医科歯科の春日井昇平先生、です。
 これまで3例の手術を行っている経験者but初心者の私としては、解剖学的な注意点、耳鼻科的な知識、移植材や手術法などのトレンド、そもそもサイナスリフトの必要性、など非常にタイムリーに役立つ講演であり、めずらしくほとんど寝ないで聴く事ができました。
 ここ何年かのインプラントの世界は非常に進歩というか変化が激しく、また勢いのある分野なので潮流がどっと極端に触れていく、よく言えば日進月歩、悪く言えば朝令暮改という感じです。つい何年か前は上部構造主導のインプラント治療のために骨移植、骨増生がいつも必要みたいな事が叫ばれていたのが、あっという間にグラフトレス、フラップレスの流れに変わっている、そしてその方向でなければダメようなことを言う先生もいる。ケースにより最適な治療法は違うはずなのですが、どうも勢いで極端に振れる傾向があるようです。
 以前に書いた様に形よりも出来るだけ低侵襲の良い場合と手術が大変でも移植をなど行わなった方が良い場合と、患者さんの要求、条件、部位等様々に変化するわけで、それを適正に決めて施術するのが臨床医の役割です。その前提として様々な手技を行える幅広い能力を持つことが必要だと思っています。

2009年11月23日 (月)

藤澤政紀先生講演会

 去る2009年11月12日、午後2時より平成21年度伊勢崎佐波歯科医師会学術研修会として、明海大学歯学部補綴の藤澤政紀教授の講演がありました。演題は「補綴装置に手を付ける前に考えたいこと」。
 藤澤先生は今年の6月に群馬県歯科医学会でも公開講座でお話がありました。その時とほぼ重なる御講演で、補綴医としての立場からおもに咬合をいじる時の危険性、心身医学的問題のある患者さんへの基本的なスタンス、などを話されました。今回は顎関節症の患者さんに関する話を詳しくされたようでした。
 ちょうどドライマウス研究会と、歯科医師会での精神科の先生による歯科心身症のお話をはさんで、藤澤教授の講演を聴いた訳です。補綴治療を行う場合には可逆的な方法をとり、「患者の訴えを解消する上での不安を軽減していく、いわば簡易精神療法を踏まえた可逆的アプローチです。このアプローチは、治療方法であると同時に診断を下す上での根拠を提示するという点では、検査も兼ね備えているといえます。」という考え方は非常に共感できるもので、また日常試行錯誤的に行っている方法を意識させてくれるお話でした。
 日頃考えるに、雑誌等で華々しく紹介される咬合を再構成してしまうようなケースは、はたして問題なく経過しているのでしょうか。某先生のおっしゃられていた「インレーひとつ外れても、局所の問題と考えてはいけない。すぐに再装着するのではなく、咬合の問題を掘り出して、全顎の治療にもっていく。それがコンサルテーションである」というようなアプローチは、われわれを経済的に幸福にするかもしれませんが、果たして不幸にしてしまっている患者さんはいないでしょうか。