2009年11月22日 (日)

当院のインプラント治療の現状 その3

 このようなインプラント臨床の経験の蓄積、さまざまな講習や勉強、さらには卒後四半世紀弱の歯科臨床経験から、現在の私のインプラントの臨床的な基準です。

〇まずできうる限り患者さんの天然歯を残すことを尊重します。そのためには歯周治療や歯内治療等の可能性を探ります。

〇また天然歯を抜歯とするか保存するかは、予防に対する患者さんの意欲や経済的、社会的な条件も重要な要素となります。

〇これらの診断の下、に残せる歯と抜歯となる歯をきちんと選別し、その上でインプラントを含めた総合的な治療計画を立てます。

〇残存歯を含んだ治療計画には、必ず残存歯の歯周病治療、予防のプログラムを含みます。

〇インプラントの治療計画には、安心安全な手術のため、CT撮影を必ず行います。

これらの準備の上で作った治療計画は、

〇臼歯部のインプラントでは、できるだけ「グラフトレス」の道を探ります。すなわち骨移植などの付帯手術なしにできる方法を、ショートインプラント、傾斜埋入、歯肉形態の補綴物による再現、などにより探ります。

〇前歯部のインプラントでは、審美的な要求にこたえるため、必要に応じて骨増生やGBR、歯肉移植などの手術を行います。

〇インプラントの数は、患者さんの手術侵襲と経済的負担の軽減のため、可能な限り少ない本数で済ませるようにします。すなわち、

〇1本欠損、2本欠損ではもちろん1本、2本のインプラントが必要です。

〇3本欠損以上は、できるだけブリッジの道を探ります。

〇全歯欠損→4本から8本 基本的にはオールオン4。

 もちろん患者さんの顎骨や咬みあわせの条件、治療に対するご希望等は個人個人で全く異なります。したがって個別に、患者さんと話し合った上で計画を立て、治療計画書を作製して説明し、承諾の下に治療を開始するようにします。

2009年11月 4日 (水)

CT導入速報

 さる11月1日、待ちに待ったCT(兼デジタルパノラマ)撮影装置が入りました。ここ何年間か、当院のスペース等の条件、仕様・性能、メーカーの対応等さまざまな要素を研究した結果、朝日レントゲン工業製の「AUGE(オージェ)」を入れることを決めました。そして過日、設
置作業が行われました。

 当日は9時かDsc_0108ら、これまでのパノラマレントゲン装置の撤去、新しい装置の設置、電源やデータのケーブルの調整、パソコンの設置と解析、画像管理ソフトのインストール、等々で夜8時過ぎまで、びっしりと作業が行われ、私も見学と手伝いをかねてみていました。何とDsc_0112か無事に試運転完了。





 

 次ぐ日2日には、午前中はうろ覚えの私による慣らし運転、午後から診療時間中に業者さんによるスタッフへの説明と補助、さらに最後の1時間を空けておいたので、私も含めてさらに操作法等の説明と実習を行ってもらいました。最終的にやはり8時過ぎまで、朝日のYさん、本当にご苦労様でした。Dsc_0110
 特に画像の解析と管理のソフトが盛りだくさんなため、完全な使いこなしにはちょっと時間がかかると思いますが、同時に交換したIP(イメージングプレート)によるデンタルX線とパノラマの画質も向上し、CTとともに診断のための強力なツールになると思います。またインプラントをはじめとして安心安全な手術のために活用したいと思います。

2009年10月 8日 (木)

オールオン4

 昨日、いわゆる「オール・オン4」もどき、を実施しました。「オール・オン4」とは無歯顎のインプラントによる補綴方法の一種で、4本(必要によっては5~6本)のインプラント上に全顎のインプラントブリッジを装着するもので、かつ手術当日(あるいは翌日)にプロビジョナルを入れてしまい、即時荷重を行う方法です。4本のインプラントは前歯部2本、臼歯部は下顎管という骨の中の太い神経を避けるために、神経の出口であるオトガイ孔より前に、かつできるだけ臼歯部に義歯を伸ばせるように後ろに傾斜させて、埋入します。
 今回は臼歯部にも十分な骨の高さがあり、かつ骨質も良好だったため、臼歯部のインプラントはオトガイ孔よりも後ろに埋めましたが、4本のインプラントによって作ってあったプロビジョナル(仮義歯)を装着しました。
 最近では「ノーベルガイド」等、CT画像を基にしたコンピュータシュミレーションによって精密なサージカルガイドにより、手術の時に骨に穴を開けるドリルの方向と長さを正確に規定し、ぴったりと予定した位置に埋入する方法もあります。これによればフラップレスといって粘膜に切開を入れなくてもインプラントの埋入が可能な場合もあります。
 しかしながら当院ではまだそれには対応しておらず、また安全のためにも切開してきちんと骨を露出し、方向や長さを骨の形と比べながらドリリングします。今回もCTを撮って計画はしましたが、開けてみると非常に不正な形の骨が残り、また前歯部は非常に硬く削るのに難儀な骨の密度でした。このような状態をフラップを開けないで手術するのは、逆によほどの経験が無ければ不可能だと思います。
 インプラントを埋入、アバットメントという義歯との結合部をインプラントにねじ止めし、歯肉を縫合した後に、あらかじめ作っておいた義歯をレジンで固定します。しかしこのような状態の骨だったので、もともと計画していた位置とかなりずれており、結構苦労して何とか定位置、すなわち上顎の義歯ときちんと咬む位置に固定することができました。ここまで手術開始から3時間、一応咬める状態で患者さんを帰すことができました。我ながら上手にできたと自己満足。
 今日は手術後の洗浄に来てもらいましたが、思いのほか腫れも少なく、義歯の咬合調整をしてかっちりと咬めるようにしました。これで数ヶ月使っていただき、きちんとした義歯を作ります。

2009年10月 4日 (日)

インプラント審美修復講習会

 今日10月4日は品川のノーベルバイオケア研修室にて、小濱忠一先生の講演を聴きに行ってきました。演題は「インプラント修復-審美性を損なってしまったケースから学ぶその原因と対応」という非常に具体的なもので、内容もまさにこのとおり、実践的かつアドバンスなものでした。

 現在ではインプラントはただ骨にくっついて機能すればよい、というものではなく、特に前歯部においては「美しく」できてかつそれが長持ちしなければ成功とはいえないものとなっています。そして一時代、というかほんの5年前に比べても、そのための技術、ノウハウや材料、製品等がかなり確立されてきたと思います。しかしながら患者さんとかつわれわれ術者双方が十分に満足できる仕上がりを得ることは、まだまだ簡単なことではありません。天然歯を使った修復でもそうですが、インプラントにはさらに特有の問題点が多々あります。

 今回の講演では、というか最近分かって来てよく言われることとしては、硬組織(骨)よりもより軟組織(歯肉)の役割が大きいということです。審美的に問題になることといえばまずインプラント周囲の歯肉の退縮(下がってしまうこと)や形態の不良ですが、しっかりとした厚い歯肉が存在することが非常に重要ということです。そのために、ソフトティシューマネジメント、すなわち歯肉や結合組織の移植、手術時の弁の形成とその戻し方などが大切になります。
 また特に複数のインプラントを並列した場合、その間の歯冠乳頭を作ることはなかなか難しいのですが、アバットメントの形態等のきめ細かな工夫の積み重ねによって確保することができるということです。

 もちろんただこれだけではなく、非常に盛りだくさんの、実戦的な御講演でしたが、私にとっては小濱先生の講演は何と言っても「眼の保養」というか、これだけ美しい仕上がりができるのだ、という基準の確認という意味が非常に大きいといえます。卒後大学に残った時に、大山教授の臨床や技工物を見てその美しさに感動したように、補綴をやるものにとってはできの良いものを見ることが非常に大切だと思います。

2009年10月 3日 (土)

群馬県歯科医学会 宮崎真至教授講演会

 10月1日(木)、群馬県歯科医学会の公開講座で、日大歯学部の保存の教授、宮崎先生の講演会がありました。「最新の接着技術とナノフィラーコンポジットレジンを用いた審美修復」という演題で、3Mのバックアップによるものでした。まず残念だったのは、行ってみると参加者が非常に少なかったことです。学会の地区の幹事を拝命しているため歯科医師会の支部の例会で私も宣伝したのですが、伊勢崎地区からの参加者は私だけでした。
 宮崎先生は最近「旬の」講演者の一人といえると思います。今年の補綴学会でも審美に関してのシンポジウムで保存修復の立場からお話をされていました。「立て板に水」というか豊富な知識と臨床に裏づけされた技術のお話とが、雑談を織り交ぜながらどんどんと出てきて、なかなか着いて行くのが大変ではありましたが、ぜんぜん眠くないエキサイティングな2時間でありました。接着に関する基礎的な話も、またビデオを多用した実際の術式の部分も、まさに明日からの臨床に非常に役立つものでした。
 近年のコンポジットレジンと接着システムの進歩によって、かなりの程度までの歯牙の修復は口腔内で直接法で、しかも強く美しくできるようになっています。しかしながら時間が無い、時間に見合ったペイがなされない、という理由でインレーなどの間接法、また金属による修復になってしまうことが少なくないと思います。例によって保険の採算性の話になってしまうのですが、そのために保険適用になっていない材料で私費にて行うレジン充填処置も流行ってきているようです。患者さんの立場からも、われわれの立場からも、不満足ではあるものの保険制度は基本的に必要なものだと思います。そしてその維持のためには現在程度の低価格に押さえられていることもまた理解できます。やはりレジン充填のような基本的な処置においても、保険と自費の2本立てで行くことは仕方ないのかとも思いますが、自分はおそらく自費では行わないでしょうし、これまで保険で治療している多くの患者さんの理解は難しいのではと思います。それでも今回見せてもらったような技術はぜひ身につけたいもので、精進したいと思います。

2009年10月 1日 (木)

院内ミーティング

 昨日(9月30日)は診療後に院内ミーティングを行いました。約2年ほど前から、月に1回月末に近い日に、診療を定時の1時間前に終え、ミーティングを行っています。内容はその月の報告、つまり私の聴いた講演や衛生士に参加してもらった講演について報告、院内の問題点についての話し合い、先の予定の話し合いなどを行います。残り時間で、院内感染防止のテキストなどの輪読を行います。昨日は診療時間が延びてしまい、30分弱の時間しかありませんでしたが、以下のような内容でした。

 9月の報告 

 9月6日(日)  モリタ・ハイジニス・フォーラム2009(東京 秋葉原、衛生士3人参加) 

 9月9日(水)  伊勢崎佐波歯科医師会学術研修セミナー 「精神疾患を学ぶ  パニック障害や身体表現性障害の患者さんの対応は? ~歯科治療で注意すべきこと~」  医療法人高柳会 赤城病院   精神科医師 中島政美先生

 9月12日(土)  平成21年度 第2回歯科医療安全研修会 「歯科診療所における医療安全管理体制の構築について」  横浜市 みほ歯科医院院長  中島 丘先生              

 10月、11月、年末年始の予定について話し合い

 (当院のスタッフはおとなしい(?)ので)なかなか積極的な発言や提案などのを引き出すのは難しいのですが、少しずつでも充実させていただきたいと思っています。また医療安全などスタッフと知識を共有しなければならないことが日々増えていきます。きちんと時間をとってのミーティングは必要不可欠であるとおもいます。

2009年9月30日 (水)

当院のインプラント治療の現状 その2

 続いて、手術法などについて。

○埋入手術にあたって、1回法が31回、2回法が62回、1回法と2回法の混合が4回でした。近年の傾向としてはインプラント表面性状の改良等により骨との結合がしやすくなったため、1回法で行うのが主流になってきているようですが、当院の傾向としてはむしろ2回法が増えています。というのもインプラント周囲の歯肉の形をきれいにするために、2次手術時に修正する場合が多いからです。

○オールオン4をはじめとする即時荷重も数回行いましたが、主流にはしていません。

○フラップレス(粘膜を開かない手術法)は現在まで行っておらず、また基本的には採用する予定はありません。手術の安全性を確保するためです。

○骨増生手術は、GBRが13回、これには主に切削時に集めた自家骨とβTCPなど人工材料の混合物を同時に用いています。また下顎枝から採取したブロック骨の使用が2回あります。

○上顎洞関係の手術は歯槽頂からアプローチするいわゆるソケットリフトが10回、側方からのサイナスリフトが3回です。

○GBRのメンブレンは主にゴアテックス(非吸収性)を用い、2例ほどバイオメンド(吸収性)を用いています。人工骨材料は主に国産のオスフェリオン(βTCP)、セラタイト(βTCP+アパタイト)、アパセラムAX(多孔質アパタイト)を用いています。

○術前のCT撮影は、必要に応じて行っていますが、半数以上の症例に及んでいます。これまでは市民病院に依頼して医科用のヘリカルCTを撮影してもらい、データを分析していましたが、年内に院内に歯科用コーンビームCT撮影装置を入れる予定です。

○1度の手術で埋入する本数は最大4本程度、またできるだけ片側にとどまる様にしています。ただし、オールオン4など必要な場合はその限りではありません。

2009年9月24日 (木)

当院のインプラント治療の現状 その1

 遅ればせながらインプラント治療を始めてから5年弱、インプラントの埋入本数そろそろ200本の達しようとしています。そこでこの節目に当たり、当院のインプラント治療について、これまでの実績のご報告と現在の基本方針についてまとめたいと思います。

○インプラント本数198本に対し、2次手術を除いたオペの回数が103回。ただし骨増生のみの手術が5回で、したがって1回のオペでの平均埋入本数は約2本でした。

○上顎が103本、下顎が95本で、ほぼ上下顎同じ埋入数でした。

○使用したインプラントは、ノーベルリプレイス・テーパードが124本、ストレートが69本、スピーディが5本でした。最初にテーパードを導入し、その後下顎にはストレートを用いるようになり、最近スピーディーも使用し始めたという状況です。

○長期の予後はまだ語れる期間ではないですが、これまで埋入したもののインテグレーション、すなわち骨と結合せず、除去したものが4本ありました。

○その原因。2本は安静にすべき期間中に対合歯と咬みあってしまったためにインテグレーションが阻害されました。また2本は骨移植に関係するものでした。うち1本は既存の骨の上に移植材を置いた部位に埋入しましたが、深度が浅くて骨に固定できていませんでした。これら3本は再度埋入しなおし、きちんと結合しました。残りの1本はソケットリフトで骨を作った部位に埋入しましたが、結合せず除去し、使用しませんでした。

2009年8月29日 (土)

8月の研修など

 今年の8月は天候不順や早く来た秋という感じで、近年ではとてもすごしやすい夏でした。医院の夏休みはお盆の頃、今年は13日から17日でしたが、その前に2日、9日と東京に研修に行ってきました。
 8月2日(日)はGC主催の経営関係のセミナー。大阪市開業の南清和先生の、「歯科医院成功へのステップアップセミナー、『ミナミ歯科クリニック』19年の取り組みからみなさんにおつたえしたいこと」です。直接存じ上げているわけではありませんが、技術を持っている先生であり、またもちろん経営的にも成功している先生で、参考になることがたくさんありました。しかし残念ながら根本的な診療姿勢が自分とはずいぶん異なっていると思いました。

 9日はノーベルバイオケア(インプラントとプロセラの会社)によるエステティック・フォーラム2009という集まりで、本当は前日土曜日の午後からあったのですが、診療の関係で日曜のみの参加でした。品川のプリンスホテル国際館の広い会場にステージをしつらえ、インプラントのワールドワンの会社の1年に一度のこのような集まりはこれまで非常に派手でイケイケという雰囲気でした。しかし今年はインプラントをめぐる環境の変化、すなわちずいぶん普及したことによる事故やトラブルの増加に対応してか、それへの反省や警鐘を含んだ落ち着いた内容のディスカッションが多かったように思います。この日は臨床歯周病学会の東京支部の研修会も重なり、そちらも二階堂先生の講演やインプラント周囲炎に関するシンポジウムがあったようでどちらに出るか迷ったのですが、まあ失敗ではなかったと思います。

 さて、いずれも集まりが終わったあと、2日はGCの、また9日は朝日レントゲン工業のショールームに、歯科用CTの説明を聞きにいってきました。先日行ったモリタのとあわせ、これら3社から選考しようと思っています。うちの医院のレベルではいろいろな意味でずいぶん背伸びした設備投資になると思いますが、インプラントのみならず歯内治療、歯周治療、外科治療に非常に強力なツールになるのではないかと思っています。

2009年8月 2日 (日)

興地先生エンド講演会

 さる2009年7月22日水曜日、診療を少し早く切り上げ、群馬県歯科医師会館に前橋市歯科医師会の学術講演会を聴きに行って来ました。新潟大学教授の興地隆史先生のご講演で、演題は「歯内療法の潮流」~予知性のさらなる向上のために~ です。歯内療法(エンド)とはいわゆる「歯の神経」の治療、「根」の治療のことです。われわれにとって日常的なこの治療で、ずっと昔から同じような治療であると考えられてきたのですが、この10年くらいの間にパラダイムシフトといわれるほどの器材、術式の変化がありました。講演では最新のエンド治療全体の概説を示しながら、成功率の上昇にもかかわらず残ってしまう難症例、経過不良の原因について、見逃しやすい注意点などを強調しながらご教示されました。

 興地先生は医科歯科出身で、私の一つ上の学年です。私が卒後残っていた顎口腔機能治療部の研究室はエンドの教室と同じフロアの隣でしたので、直接の交流はなかったもののお顔はよく拝見しました。例によって同窓の講演はストンと収まるというか、とても気持ちよく理解できるもので、大変勉強になりました。