2007年6月25日 (月)

臨床歯周病学会に行ってきました

 しばらく更新をサボってしまいました。その間タマネギの収穫やら、診療のことやらあったのですが、どうもここに載せる話題について自分でも基準というか意義がはっきりしないで、気分が乗らなかったのです。現在でもスッキリしたわけではないのですが、とりあえず書くことが解決につながるかと思い、キーボードに向かっています。

 23・24日(土日)と、名古屋で臨床歯周病学会に参加してきました。まずは学会の報告。歯周病関連としては、日本歯周病学会がありこれは今年50年を迎えるわけですが、臨床歯周病学会は約25年前に主に歯周病に造詣の深い開業医が主体になって設立されました。したがってより臨床に即した活動が主体となっています。(学会HPを参照)
 今年4月に入会し(その経緯は別稿で書きます)、今回はじめて年次大会に行ってきました。普通の学会とは異なり、1日目の半分はケースプレゼンテーションの発表、昼に委員会報告とランチョンセミナー、後半と2日目は特別講演、それにポスターという構成で、それ以外に歯科衛生士シンポジウムと市民向けの講演が開かれていました。土曜の朝に出発した関係でケースプレの途中から聴いたのですが、今を時めく再生療法の症例のオンパレードでした。ランチョンセミナーは8人程度の少人数のテーブルで食事を取りながら講師の話を聴くという初めての方法でしたが、若干時間が足りなくて突っ込んだ話も中断となってしまったのは残念でした。
 今回主目的として聴きたかったのが米国のバートン・ランガー先生による特別講演です。この方はある歯周組織手術の名前にもなっている著名な臨床家で、今回は「天然歯とインプラント周囲の軟組織と骨の再生」という、今最も興味ある演題でした。それにしてもずっとオペを主にした症例のスライドの解説が続くという、徹底した講演でありある意味でヘビーな、また別の見方をすればメリハリの無くなりがちな内容でした。私自身としてはある程度知識がある上で実際の写真を見るのはとても役に立ちましたが、どうしても睡魔に襲われる瞬間がありました。


 学会場では補綴学会とは違い、よく知った顔はなかなか見当たりませんでした。が、ひとりだけこの春に医科歯科の歯周病の教授に就任された和泉先生とほんの少しだけ話す機会がありました。先生には学生の時にお世話になり、また確かずいぶん前に受けたGTRの講習会で助講師を務められていてそこでもお話したと思います。学生当時からとても穏やかで人間的な先生で尊敬していましたが、母校の教授になられて本当に嬉しく思っていました。先生の方も顔を覚えてくれていらっしゃったようで、ありがたいことでした。

 名古屋に関する事と、私の歯周治療ことはじめ(?)は次の稿で。

2007年5月26日 (土)

補綴学会(神戸)に行ってきました

 5月18日金曜日の診療は5時半で終わらせていただき、大急ぎで神戸に向かいました。東海道新幹線には喫煙車があることを忘れ、自由席の喫煙席に飛び乗ってしまいました。乗車率は120%という事でしたが何とか座れ、弁当を食べ始めました。さすがに4時間煙の中は辛かったですが、煙のせいか頭がさえてずっと本を読んでおりました。新神戸に着いたのは11時前、歩いてホテルに向かいました。

 次ぐ19日土曜日の9時からの日本補綴歯科学会第116回学術大会(第5回アジア補綴歯科学会併催)にポートピアホテルへ向かいました。補綴学会は昨年から年1回の開催となり、参加者も集中するせいか、会場は大変な人込みでした。開業医にとっては一般講演(いわゆる学会発表)をずっと聴いているのは大変ですが、最近の学会は特別講演やシンポジウム、セミナーなどが数多く組み込まれており、臨床に直結する勉強ができるようになっています。それにしても朝9時から夕方6時過ぎまでのプログラムにずっと出ているとかなり疲れます。

 一日目のなかではSDAに関するシンポジウムが興味あるものでした。北欧で80年代に提唱されだしたSDA(Shortend Dental Arch)とは要するに最も後ろの臼歯何本かは補綴しなくても支障がない、補綴することの害の方が大きいという考え方で、医療経済的に利用される可能性が非常に大きい概念です。補綴学会ではこれに対して複数の研究機関で多方面から検証を行なっており、その報告としてのシンポジウムでした。この概念が日本に紹介されてから、日本と欧米の食文化の違いや歯列の形の違いなど、日本人には当てはめにくいのではないかという議論がなされてきました。このシンポジウムでも同様に、やはりすべてこの考えで行ってしまうのは如何なものか、「SDAでも良い場合がある」という考えに落ち着いていたと思います。また昼食時に行なわれたランチョンセミナーでは、審美歯科補綴の基礎、基盤である歯の形成(きれいな形に削る事)を主なる話題として取り上げられていました。これは恥ずかしながら知らない事も多く、非常に勉強になりました。

 学会も以前のように大学に在籍している時に集団で出ていたのとは異なり、個人的に参加していると夕食も一人でとることが多いのです。せっかく神戸に来たのだから何か美味しいものを、などとも考えていました。しかし結局迷ったあげく、帰路途中の場末の中華料理屋に入りました。そこで店の体裁に似合わず美味なるモノが・・・ということにはならず、量は多かったがちょっと寂しい夕食となりました。そこからホテルに向かうとなんとも美味しそうな匂いのするステーキ店やお好み焼き店が。いつもながら失敗してしまったのでした。

 2日目はインプラントの咬合(かみ合わせ方)に関するシンポジウムが午前中いっぱいありました。インプラントが非常に浸透してきた現在にあっても、その咬合に関して確立した理論がない、というかいろんな人が10人10色のことをいっている感があります。これはインプラントの研究や臨床が、口腔外科、歯周病科、補綴科、さらにはインプラント専門家を名乗る人達など、多くの分野で行なわれてきたことが最も大きいと思います。咬合の専門家である補綴科としては、これに対してきちんとした意見を持つべきだと思います。結局本シンポジウムでは天然歯の咬合と特に変化させる必要はないが、インプラントのもつ特性を考慮して歯列全体の咬合の変化に対応できるように観察していかなければならない、という結論になったと思います。もっと言ってしまえば、天然歯の咬合も「こうすればうまくいく」という統一的なものはないのであって、病的でない状態を保てるように全体の変化に対応していくしかないのです。それにインプラントも含んで考えましょうという事だと思います。

 午後は専門医研修会として総義歯の咬合が取り上げられました。最近定着している「リンガライズド・オクルージョン」の話でしたが、これらに関しては別の機会に。

 学会に行ってもうひとつ楽しみなのは、旧知の顔に出会うことです。今回も教室に在籍中にお世話になり現在は母校の教授となっている谷口先生、新潟大学の教授になった同級生の魚島先生、同じオーケストラでビオラを弾いていた2年先輩で、現在総義歯の教室にいる水口先生など、親しくお話しをすることができました。みなほとんど1年ぶりに再会するにもかかわらず、毎日一緒に仕事をしているような話しかたをしてくれる、非常にありがたくも楽しいひと時でした。

 4時に終了して新神戸に向かい、混雑する土産やでプリンやチョコレートを買い込み、何とか夜中に帰り着くことができました。

2007年5月 6日 (日)

インプラント外科講習会

 ゴールデンウィーク前半の29、30日と快晴、ポカポカで行楽日和の中、東京にお勉強に行ってきました。品川のノーベルバイオケア本社研修室にて、堀内先生のインプラント外科セミナー2日間コースを受講ました。堀内克啓先生は阪大の口腔外科出身で、現在奈良県五條市の歯科医院副院長をなさっていますが、インプラント関連の再建外科では著名な先生で、多くの論文、また講演をなさっています。一昨年、先生の別のコースを受講して非常に勉強になったため、現在の自分の位置からの再確認と、その後の新しい知見の吸収のために参加しました。
 私のような補綴出身の者には、堀内先生のように丁寧に外科手技の基本やコツを話してくださる講演は非常に役に立ちます。なかなか大胆なオペはできませんが、先生のおっしゃるように供覧された大きなオペのビデオなども小さな手技の集まりからなっているわけで、私たちの行なうような手術にも大変参考になります。

 2日間泊りがけの講習会はとっても疲れますが、大きな充実感を持って帰ってきました。

2007年4月25日 (水)

入れ歯の形

 いわゆる入れ歯、私たちの言葉では床義歯とか可撤性義歯とかいいますが、皆さんの意識ではピンク色の歯肉の部分が付いた、取り外し式の入れ歯について。私は基本的に大きな入れ歯、すなわち総入れ歯や残っている歯の数が少ない入れ歯は、自ら技工をして作っています。経費の節減という意味も少しはありますが、何より歯肉の形や人工歯の並べ方について、自分で納得できるように作れることが理由です。
 今日久しぶりに、ほぼ総入れ歯の症例で技工所に出した義歯をセットしました。しかし、何となくしっくり感じない。患者さんには問題なかったようですが、今ひとつ気持ちよく入れられませんでした。もちろん当院でお願いしている技工所は高い技術を持っており、それなりの料金を払っています。しかし何となく自分のイメージとは違ってしまう事が、やはりあります。
 なぜダメなのかといえば、細部について一つ一つ理由は付けられます。しかし全体的に見たときに「パッ」と違い、違和感を感じるものです。例えば、絵を見たときに素人の私たちが分からないのに、絵心のある人にはその違いが分かるようなものでしょうか。
 診療の終わったあとや休日に、技工作業をするのはなかなか辛いものです。あるいはその時間を診療の延長や勉強に使った方が良いのかもしれません。しかし補綴科の端くれの私としては、技工は診療や研究のヒントの源泉でもあります。

2007年4月17日 (火)

今月はオペの月

 今月は毎週1回ずつインプラントがらみのオペがありました。上顎の総義歯、下顎の総義歯、下顎の部分欠損と、ケースもちょうどバラけて実習をしたような感じです。シリーズ最後の今日は、下顎の4本欠損に2本埋入と、2本の部位の骨増生の手術をしました。私は度胸もないほうなので、あまり大きな骨移植は先々も行なう事はなさそうですし、またできるだけ侵襲は避けたいという考えです。しかしマイナーな骨増生はどうしても必要と思います。
 今日は2本分の骨欠損部にゴアテックスを用いたGBRを行ないました。メンブレンの使用は口腔外科系の人とペリオ系の人で全然意見が違うようです。どちらもおっしゃる事は最もで、どちらが正しいのか分かりませんが、私は使ったり使わなかったりしています。骨補填材は、骨の削りかすとオスフェリオン(オリンパスのβ-TCP)を半々で用いています。
 メンブレンはどうしても露出してしまう事が多かったのですが、最近は何とかなってきています。今日の症例もそれだけが問題です。

2007年4月11日 (水)

新人衛生士が入りました

 新年度から歯科衛生士の新人が入り、当院のスタッフは歯科衛生士3名、歯科助手1名の体制になりました。患者さんの数や診療報酬の規模からするとずいぶん贅沢な規模ですが、歯周治療や予防管理をある程度の水準で行なおうとすると、衛生士の増員は不可欠でした。どうしても年頃の女性ゆえ、これまでも結婚や妊娠等の事由で予定外の退職者が発生し、患者さんにもご迷惑をかけたことがありました。現在の状態がいつまで続くか分かりませんが、この体制できっちりと診療をやって行きたいと思います。

2007年4月 4日 (水)

楽器を調整に出しました

 先日My楽器を調整に出しました。私はアマオケでオーボエを吹いているのですが、この楽器はその進化の過程で非常に複雑なキー(指で押さえる部分)のシステムを獲得し、調整すべきネジがたくさんあります。キーは楽器を演奏すれば当然激しく動くし、トーンホール(楽器本体の管にあいている、音の高さを変えるための穴)を押さえるコルクやタンポは徐々に変形するので、時々ネジの調整をしないと狂ってきます。そうすると何となく音が出にくくなったり、音色が変化してきたりするのです。時々は自分でネジを回すのですが、素人ではなかなかキチンとできません。専門家の調整に出すとびっくりするほど吹きやすくなって帰ってきます。
 私たちが行なっているメンテナンスもこれと同じだと思います。治療の終わった患者さんは、何とか満足な機能や審美を得られる事だと思います。その状態を保つためには、毎日行なう自分での口腔清掃は非常に重要です。しかしながら時々専門家である私たちが関与する事で、どうしてもレベルが下がってしまいがちなブラッシングの矯正や、普段できない部分の清掃、さらに全体の崩壊に繋がる危険な兆候が発見できるのです。
 歯科の治療が一応終了した時点は、メンテナンスの始まりです。それからの期間の方がずっと長いわけで、せっかく治した状態を保てるように、定期的なチェックに受診されるようにお願いします。

2007年4月 3日 (火)

HPリニューアルしました

HP管理人荒木田です。

荒木田歯科医院HPをリニューアルしました。実は1月末にリニューアルしたばかりだったのですが、作成中にHTMLだけで作るHPに限界を感じ(生意気にも)、一念発起してスタイルシートを勉強し、今回の再リニューアルとなりました。

とはいっても素人の手作り。他の歯科医院のHPのようにはいきませんが、そこは内容で勝負?今回レーザー治療のページも追加し、ますます読み応えアップです。

今後は途切れがちな医院だよりや、院長の専門分野である義歯などの記述を増やし、ますます充実したHPにしていきたいと思っていますので、今後も荒木田歯科医院HPをよろしくお願いします。

http://www8.wind.ne.jp/arakidac/

2007年3月31日 (土)

私のインプラント事始め番外ーPOCに行って来ましたその2

 他の3人のスピーカーは、フランスのF.Renouardにより「低侵襲のインプラント治療」として、フラップレス(歯肉の切開、剥離を行なわない術式)、グラフトレス(骨移植を行なわない)、ショートインプラント(短いインプラント)について講演されました。近年大規模な骨移植等を伴った再建がもてはやされてきた傾向がありますが、患者に対する侵襲の低減ということに重点を置いたアプローチについて述べられたのですが、特に短いインプラントの使用についてはこれまでも問題ないという意見はあったものの、多くの症例を示した説得力のあるものでした。
 次いでスイスのC.Haemmerleにより「上部構造と材料選択」および「抜歯窩の治癒とインプラント」として、治療計画および前提となる診断の重要性とその方法が、整然と述べられました。特にスライドの症例は審美性に優れたものばかりで、その臨床のアプローチの正しさを裏付けるものでした。
 さらにスウェーデンの歯周病学者T.Berglundhにより、「インプラントの生物学的トラブル―頻度と診断」および「リスク、影響因子と治療」として、インプラントの失敗に関わる特に歯周病学的な問題点が述べられました。高い成功率を強調するだけでなく、特に患者単位での失敗率を正しく見るべきであること、またインプラント周囲炎に対する対処方法については、臨床的にも非常に役立つものでした。
 

 最後に3氏と実行委員の先生方によるシンポジウムが3時間行なわれ終了となりました。実行委員による最後の挨拶では、今回を第1回としてこれから大学の研究者を中心とした学会に発展させていきたいとのことでした。非常に充実した2日間でしたが、1日目10~20時、2日目9:30~16:30という長丁場でさすがに尻と背中が痛くなりました。

2007年3月28日 (水)

私のインプラント事始め番外ーPOCに行って来ましたその1

 この間の土日(3月24・25日)に、医院を休診にして「第1回パシフィック・オッセオインテグレーション・カンファレンス(POC)」に東京へ行って来ました。現在のインプラントの源流であるスウェーデンのブローネマルクを日本に導入した小宮山先生が会長となり今年初めて行なわれた学会ですが、その目的は同氏の次の挨拶文の中に簡潔に述べられています。(「インプラント療法が、現代歯科学における有力な一選択肢であることは論を待ちません。科学的な背景を持たない方法が、安易に臨床応用された場合にはどのような結果を招くのか、多くの歯科医師は認識していると思われます。にもかかわらず、現実にはインプラント療法により所期の回復が得られないといった問題点が増えつつあり、一般の患者あるいは一部の歯科医師からインプラント療法が再び唾棄すべきものと捉えられかねません。このような状況になる前に、一人でも多くの患者が、適切な治療により快適な生活を享受できるように、歯科医師が正しい知識、適切な医術、そして真摯な心構えを学ぶことが求められています。(後略)」)

 定員700人の会場はほぼ満席で、まずブローネマルク先生のブラジルからの衛星中継による講演が行われました。総論ではインプラントを用いて快適な口腔内の状態がより多くの患者さんに享受されることを願っている事が、ひしひしと伝わってきました。残念ながらインプラントはまだ経済的な問題で浸透する事が阻害されていますが、その解決が課題であるようです。現在の仕事の紹介では、ほとんどが顎顔面補綴および四肢や手指などの機能回復の症例でした。ご年齢を感じさせない精力的な活動に感銘を受けました。

 その後に少し小宮山先生によってブローネマルクとその日本への紹介の歴史が話されましたが、前に書いた様に私が大学在学中がまさにその時期にあたり、当時の雰囲気も納得できるものでした。またそれを考えると当時医科歯科大学のインプラントグループで行なわれていた一連の業績は、極めて先進的であったこと、さらにそれがあまり日の目を見ないことは(もちろん私は全く当事者ではないのですが、何人かの友人がそこにいたことから)あらためて残念な事だと思いました。